2013年11月01日
        モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
 世界陸上が開催された暑い8月から一転、9月に入るや、まるで日本の冬のような気候となり、モスクワでは、昼間でも10℃前後の時折雨模様の気候がすでに半月も続いています。今年は4月末の30℃近い突然の高温気候が8月まで続きましたが、9月はロシア特有のどんよりした秋に突入しました。
 夏休み期間中、比較的空いていた道路も朝夕激しい渋滞状態となっており、交通事故も相変わらずの毎日で、今後更に運転には注意が必要です。
 いうまでもなく、ロシアは西から東に広大なテリトリーを有していますが、今般、物流のそれぞれの要所である、フィンランド及び極東を訪問する機会がありその広さと課題を改めて実感することとなりました。
 
フィンランドのロシアに近い港街KOTKA(コトカ)は昔からロシアとの物流の要衝で、港湾設備及び多くの倉庫が立ち並んでいます。
 今回コトカには、モスクワから長時間かけて夜行列車で訪問しました。以前はかなりの物流がありましたが、その量がかなり減っているように見受けました。ロシアに向かうルートが西欧、バルト、北欧と各地を起点とするように“分散”してしまったことにもよるようですが、8月号でレポートしましたように、最近ロシアの景気、特に一般消費が低迷していることが大きい原因であるようです。
 NOKIAに代表されるようなIT大国として活況を呈した以前の面影はなく、特に地方都市では厳しい状況があるようです。
 また最近、極東のウラジオストック、ナホトカの客先を訪問しました。
 ウラジオストックは先般開催のAPECで、空港は新しく建て替わってはいましたが、80万の人口を有する市内は大渋滞で、海岸近くの坂道の多い道路もあまり整備されておらず、朝夕のラッシュは、モスクワ並みです。
 街を走る乗用車の殆どが右ハンドルの日本車で、駐車場の出入り口の料金システムも右ハンドル車用に設定されているのには、驚きでした。ここからナホトカまでは150kmの距離ですが、日本海がところどころに見え隠れする海岸線に沿った道路は十分整備されておらず、APECの準備でインフラを整えた際、何故同一経済圏にある隣町のナホトカにも配慮しなかったのか、極めて残念です。
 ナホトカは、静かで落ち着いた漁業と港湾の街ですので、道路が整備されれば今後更にウラジオストックと一体になった発展が期待されると思われます。モスクワへの帰りのフライトには、大勢の子供達が搭乗していました。水害のハバロフスク近郊から、親元を離れ、ボランティアに付き添われ、モスクワに避難する様子でしたが、アムール川の洪水のすごさを目の当たりにした思いです。1日も早い復興が望まれます。

 
2013年10月01日
        モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
 先月のレポートでもお伝えしましたが、1カ月以上空港に滞在した米国の元諜報員はロシア滞在のビザ発給により、ロシアでの居住手続きを完了したようです。これに伴い米ロのトップ会談が当分延期された事もあり、ロシアの新聞各紙はふっきれたような記事をさかんに掲載しています。
 “希望するならば、5年間滞在を延長することも可能”とか、“米国に居る父親に対し、ロシア訪問の為のビザを既に発給した”とか、米国を挑発するかのような記事が連日目立ちます。
しかし彼が今どこにいるのか、全く伺い知ることはできません。
2013091916522425095.jpg 一方ここ1週間はこのような政治的な話題もかき消されるかのように、モスクワで開催された“世界陸上2013”が大いに盛りあがりました。特にロシアの選手イシンバエワが、女子棒高跳びで金メダルを獲得したあたりから関心は一挙に高まり、男子走幅跳び、女子走高跳び等予想外の記録達成で、金メダルを多数獲得するにつれ昼夜のテレビ中継での報道 が繰り返されていました。
 男子短距離のジャマイカのボルト選手の圧倒的な速さは間違いなく本大会の目玉ではありましたが、幅広い種目でロシアの選手が活躍する様は、開催国ならではのものではないでしょうか?
 たまたま女子棒高跳び決勝、男子マラソンを現場で見る機会がありましたので、写真を添付させていただきます。
 女子棒高跳び決勝では、同じ時間、男子円盤投げ、男子400m、800mの決勝も行われましたが、怪我で不振が予想されたイシンバエワの試技にほとんどの関心が集まり、彼女が跳躍に成功する度に大歓声があがり、競り合っていた米国、キューバの選手はその応援のすごさに圧倒されてしまったようです。
 彼女は今回での引退も噂されていましたが、本番で実力を発揮する力は圧倒的なものであり、まだ数年は余裕で闘えるように思えました。
 日本から5名の選手が参加した男子マラソンでは、特に公務員ランナーの川内選手の応援団は、地元埼玉県および出身大学のOB等バス数台分で大勢モスクワに来るなど、写真のように沿道での声援はひときわ大きいものがありました。結果は残念ながら前回大会と同じ順位でしたが、暑い日本を離れ、少し涼しいモスクワに来られた皆さんには、観光するにも快適な場所であったようです。

地元の埼玉県よりの応援団の傍らを力走する川内選手
2013091917032325088.jpg

 
2013年09月04日
    モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
 今年は4月後半から始まったロシアの暑い夏をお伝えしてまいりましたが、6月の日中30℃近い気温が続いたあと、ようやく気候は平年並みとなりつつありますが、今年の初夏が異常気候であったことは間違いないようです。日本も6月末から高温多湿の猛暑が続き、今年の夏はこれからますます厳しいものとなることが予想されるようです。
 既にロシアでは、夏休みの休暇を海外で過ごしている人々も多く、厳しい経済状況ながら、多くの一般市民はそれなりに休暇をエンジョイしているようですので、ロシアはやはり豊かな国なのでしょう。
 今年に入ってからの経済状況は既にお伝えしていますように、下降傾向に歯止めがかからず、特に“鉱工業生産”が先月、前年同月比でマイナスと発表されました。この理由が今年の5月の実質稼働日が何と15日と例年の34しかないとのことで、いったん休みが続くと、ペースを元に戻すことも極めて大変であることは、容易に理解できるところです。
 さらに小売売上の伸びも鈍化しており、多くを輸入に依存している野菜類等も日本より高く、当地での暮らしにくさは日々実感させられているところです。
 最近のロシアの話題としては 米国の元諜報員が亡命を求めて1カ月もモスクワの空港のトランジットエリアに留まり続けていることですが、モスクワでも連日大きなニュースとなっています。日本でも“シェレメーチェボ空港”の名前が急に有名になったと聞いております。
 モスクワの周辺には3か所の国際空港があり、北のシェレメーチェボ空港、JAL便が発着する南のドモジェードボ空港、西のブヌコボ空港で、どれも市内とシャトル電車で結ばれ、空港建物も大変近代的なものとなっています。
 本人は再度ロシアへの“短期亡命”を求めて交渉も始まったとのことですが、“国内での移動の自由”を条件に挙げていることが、果たして現実的に可能なのでしょうか?
 我々外国人がロシアに滞在する場合、入国ビザは勿論のこと、入国カード、滞在証明書の3種類の証明書を保持することが義務付けられており、これらが整って初めて“移動の自由”が出来るというわけです。
 自動車を運転する際にも、携帯すべき書類は何種類もあり、当地で多く見られる中央アジアからの移民の白タクでも、これらの書類の所持は不可欠です。
 ロシア政府は近年、NPOの活動を厳しく規制しており、それらは米国政府等の支援の下、扇動活動に直結するとの理由で“家宅捜査”まで頻繁に行われています。本人はNPOのサポートを受けているともいわれていますから、果たして、どのような形でロシアでの生活ができるのかどうなのか、結末についてはロシア国民も興味深く注視していると思われます。

 
2013年08月01日

        モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂


 6月に入っても相変わらず夏のような陽気が続いていますが、それでも日本の夏に比べれば湿気は少なく、時折夕立も降りますが、一年で一番すごしやすい季節を迎えています。昼間が一番長い季節でもあり、夜11時近くまで近くの公園では子供が遊ぶ声がしています。ロシアの“泥やなぎ”という木の大きめの花粉(ロシア語でトー  ポリといいます)が街の至るところで雪のように舞い散り、あちこちに吹きだまりのようになるのはこの時期の風物詩でもあります。clip_image002_14.jpg
 
このような穏やかな季節のロシアですが、先日はクレムリン近くで大規模な反政府集会が行われ、これに対抗するように、プーチン氏を中心とする新たな政治団体の結成の動きもでてきました。
 
今回はロシアで見直されつつある、“リハビリについて少しご報告したいと思います。
 
先般報道されましたが、朝のラッシュアワーの時間帯にモスクワ市内を走っている地下鉄の路線で、漏電が原因の火災が発生。駅と駅の間に停車した複数の地下鉄の車両から乗客数千人が近くの駅までトンネル内を歩くという大混乱がおき、負傷者も多数でたとのことです。今回の火災はケーブルの漏電が原因とのことですが、問題となっているのは、このケーブル類は交換してからまだ10年も経っていないという点です。clip_image002_15.jpg
 
かつてロシアでは“2000年問題”というテーマが盛んに論じられました。「老朽化した建造物、設備の補修が適切に行われないと2000年前後には、ビルの倒壊や、大規模発電施設等に事故が起こる。早急に国家規模のリハビリ対策が必要である」というものでした。
 
筆者もソ連時代、このテーマでいくつかの関係先との打ち合わせに参加しましたが、その後石油価格高騰、“バブル経済”を経由して、大規模商業施設、ビルの建築ラッシュとなり、この問題を耳にすることはほとんどなくなっていました。
 
ところが最近、古いビル、施設での火災事故が頻繁に報道されており、いよいよ抜本的な対策が検討されるのではないかと思われます。
 
アパート等のほとんどのエレベーターはケージの部分は新しくなったものの、モーター、ケーブル等駆動装置は数十年前のままといった状態で、弊社の事務所のエレベーターも時折、電気系統のトラブルで動かなくなります。
 
10年前に地下鉄のケーブルを取替えても、その後一度も点検“メンテナンスをしないと問題が起こるとの認識も報道されつつありますので、これを機会に、工場の設備を含む産業基盤の“メンテナンス”方法が再検討され、本格的リハビリに取り組む展開に広がることを期待したいと思います。


 
2013年07月01日
       モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
日本でロシアの話をする際、よく“ロシアは寒いのでしょうね?”聞かれることがあるのですが、最近の気候の変動ぶりを見ると、何と答えていいのか分からない状態です。2013060410053420543.jpg
 
先月のレポートでは、モスクワに初夏のような春が来たことをお伝えしましたが、4月後半から5月中旬にかけては、昼間25℃以上の天候が続いており、日によっては30℃近い暑さとなるなど、ここ数週間モスクワでは“夏日”が続いております。
 
これは当然ロシアの気象台始まって以来の異常気象であることには、間違いないようですが、我々を含め、すでに“夏休み”の真っただ中ではないかという錯覚にとらわれます。2013060410051720969.jpg
 
クレムリン近くの広場にある噴水にも大ぜいの人が集まっている姿も見られ、町の人々の服装も、裸に近いものを含め、すっかり夏のいで立ちです。
 
最近のロシアの経済は、最近発表された第一四半期GDP成長率が1.6%と相変わらずの低い数字であることからも分かるように、“低迷”が続いているのですが、最近の“夏のような”異常気象も経済にマイナスの影響がでることは必至であろうと思われます。
 
4月末に安倍総理一行がモスクワを訪問され、久しぶりのプーチン大統領との会談も実現したことは、当地でもニュースとなりましたが、その後は残念ながら、我々のビジネスに直接のインパクトは見られない状態が続いています。
 
総理一行の訪露前、たまたま、エネルギー省の若手幹部と面談する機会があったのですが、今回の日本からの訪問団に対しては、ロシアは石炭を始め、石油、ガスを出来るだけ買ってもらいたいと、プレゼンテーションを準備しているとの説明を受けました。
 
特に石炭については、日本は近くにあるサハリンの石炭の買い付けには熱心ではあるものの、シベリア産のものが伸びていないので、これをなんとか売り込みたいとプロジェクトチームを編成しているとの説明を受けました。
 
このようなロシア側の希望もあり、今回の安倍総理一行の訪露は、マスコミにも取り上げられている通り、双方の意向がかみ合うかもしれないとの期待を持って行われたものと思われます。
 
しかしながら、その他一般機械、消費財等の分野では、円安の効果は出てきつつあるものの、1020%の輸入関税、18%の付加価値税のコスト要因は極めて大きいものがあり、ロシアでのビジネス展開の促進には、現地生産を含む思い切った投資等の踏み込みが避けられないのではないかと思われます。

 
2013年06月03日
            モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 今年の冬は12月中旬のマイナス27度と厳しい条件で始まりましたが、その後も降雪は間断なく続き、永年の経験、技術で、大通りの雪掻きは迅速に進んだものの、その他の空き地や、郊外には、雪が高く積み上げられ、根雪は分厚い氷となって、4月の初めまで融けることはありませんでした。
 
4
月中旬になって急に暖かくなったかと思うと、今度は日中18度まで上がるという、初夏のような陽気となっています。
 
例年になく多かったこの積雪の影響で、郊外や地方の住宅地では大量の雪解け水による住宅浸水が見られ、当分水との格闘も続いています。
 
先月もお伝えいたしましたが、最近のロシアの経済指標は、回復の兆しが見られず、生産の落ち込みとともに、小売売り上げの落ち込みも顕著になってきており、ついには“ロシアの景気減速”といわれるようにもなっています。
 
この傾向に加え、先日のキプロスの経済危機は、同国を最大の投資先とするロシアにも少なからぬ影響があったと思われ、今後の成り行きにはまだまだ注意が必要といわれています。
 
度々指摘をしてきましたが、持続的な“ものづくり”が本格化することを願わずにはおれません。
 
3
月末、東日本大震災で被害のあった東北を代表するプロのオーケストラ、“仙台フィルハーモニー管弦楽団”のロシア公演がサンクトペテルブルグとモスクワで行われました。
 
世界中から寄せられた、復興支援に感謝をし、“音楽”によって力を得ながら復興に向かう被災地の姿を映画、パネルで紹介するというもので、連日コンサート会場は満員の盛況で、プロである仙台フィルハーモニーの大変レベルの高い、繊細な演奏に皆さん感動しておられました。
 
モスクワでは被災の際“千羽鶴”を贈られた小学校も訪問、お礼の演奏会が開催されたりと、盛りだくさんの日程でした。2013042411204013193.jpg
 
筆者は日本のアマチュア・オーケストラで長年演奏をしてきた関係で、音楽仲間から、仙台フィルの要請があればサポートして欲しいと依頼を受けていたのですが、チャイコフキー音楽院の大ホールに飾る“仙台の七夕飾り”の据え付けの許可が下りないとの予期せぬ相談を受け、この対策の為、当社事務所全員でモスクワ中の関係先にコンタクト、深夜ようやく7m程の高さの独立支柱を確保することが出来ました。結果、写真のような2個の“仙台七夕飾り”が、音楽ホールの広間に優雅な姿を見せた次第です。震災時は我々はロシアからは何のお手伝いもできなかったわけですが、今回少しでもお役に立てることが出来て、ほっとしているところです。

 
2013年05月01日
      モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

201304021103424172.jpg 
最近の統計によればロシアの工業生産の伸び率は昨年末より更に下落し、マイナス傾向となりつつあるようです。機械、装置製品業では、12月のマイナス0.8%から1月はなんとマイナス16.6%と大きく落ち込んでしまったとのことです。自動車の売れ行きも昨年末から、今年初めにかけて伸び率が鈍化しているとのことで、今年は売れ行きは不透明であるとの予測もあり、純国産車、外国ブランドの国産車、輸入車それぞれ、メーカーによってもばらつきが大きく、当面楽観視できない状況のようです。
 
ことしのロシアの冬は12月の末の大寒波以外は比較的平穏ですが、それでもマイナス5度前後の気温は3月にはいっても続き、雪も常に降っている状況です。意外に知られていませんが、このような、長い冬をロシアの人はいろいろと楽しんでいる様子も見られます。201304021103274007.jpg
 
一部富裕層が長い正月、欧州でスキーバカンスをエンジョイすることは、以前にもお伝えしましたが、モスクワ市内でもスキー場は数箇所あり、郊外も入れると10箇所以上ありますので、かなりのスキーヤー、スノーボーダーが毎週スキー、スノーボードを楽しんでいます。
 
モスクワ近辺に大きな山はありませんが、丘陵地帯はかなりある為、十分スキーをすることができ、筆者も10年以上前からモスクワで行われる競技スキー大会〔アルペン〕に参加させてもらい、冬の運動不足解消にも役立っています。ここ数年は日本のスキーメーカーのプロモーションのお手伝いもしており、ジュニアーチーム、シニアー層にかなり知れ渡る結果となりました。ひょっとすると、来年のソチオリンピックには、日本のスキーを履いた選手も登場するかもしれません。201304021103134172.jpg
 
最近ニュースでも紹介されましたが、先月初め、モスクワ市内に日本のうどんチェーン店の“丸亀製麺”の一号店がオープン、毎日大勢のお客さんが長い行列をつくり、温かいうどんを堪能されている様子が見られます。弊社は厨房設備、食器類の輸送、通関、メンテナンス等を担当させていただいていることもあり、今後この日本の食文化が定着することを願っています。
 モスクワでは日本レストランは数多くあるとの統計もあるのですが、そのほとんどはメニューに日本の寿司がある程度というもので、本格的なもの、特に日本人が経営しているものは、数軒しかありません。店舗不動産物件の確保の難しさに加え、儲かると法外な家賃を請求され、立ち行かなくなるケースが多く、落ち着いて店の経営が出来なくなり、撤退を余儀なくされた例も見られます。よほど良い大家に恵まれるか、自社ビルを所有しないかぎり、モスクワでの日本レストラン経営は難しいといえる状況です。

 
2013年04月01日
今月はロシアではさまざまな出来事がありました
編集非公開
        モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
先月はロシアの正月明けが平穏なものであることをお伝えいたしましたが、2月には既にさまざまな出来事がありました。
 
215日開催のモスクワG20(財務相、中央銀行総裁会議)は予定されたもので、議論の中身も、円安ではあるが当面現状を注視していこうという雰囲気で終了したようですが、ちょうど同じ日に世界中に驚きのニュースで伝えられた“隕石落下”のニュースはさすがにロシア中に大きな衝撃として、連日伝えられています。
 
ウラルの南にある、鉄鋼業中心の100万都市チェリャービンスク市の近郊に15日昼間、大きな衝撃波とともに“隕石”と思われるものが飛来し、雪と氷で覆われた湖に飛び込み直径10mぐらいの穴が開いてしまっています。
 
世界で最も大きな国土を有する国だけに、大都市のすぐ近くでも、回りには誰も住んでいない大きな湖があり、直接人家に被害があったわけではないのですが、すさまじい衝撃波で、学校、体育館等の窓ガラスが割れ、多くの人が破片、落下物等で怪我をし、修復作業に大きな予算と人手で対応中とのことです。
 
さらなる出来事は、モスクワ市が、突然“障害者、若年者を規定以上に雇用していない企業は外国人雇用枠を削減する”という通達を出し、そこには弊社を含む50余りの日本企業のリストも添付されていたため多くの企業に衝撃が走りました。その後、この基準の対象の会社は100人以上の従業員を有する会社であることが分かり、問題とされる日本企業は4社に絞られたようですが、突然の通達はその意図が未だ理解できていません。外国人雇用枠を削減するということは、弊社及び多くの日系企業事務所では、所長の滞在ビザが延長されない、すなわち事務所を閉鎖せざるを得ないということを意味します。突然どのような規則が降ってくるか分からない環境は外国の企業としては、安心して経営に専念できない訳で、ロシアで駐在する外国企業の数が増えないということにもつながっています。
 
さて、最近モスクワのオフィスビル需要に関するデータが公表されましたが、現在オフィスビルの空き室率が11%と、金融危機の2008年の7%を大きく上回っています。ロシアの大都市では“バブル期”の2005年ごろオフィスビルが一斉に建設され始めたものの、工期が予想の倍以上にもなり、また完成時には供給過剰という現状が上記の数字にも表れているようです。最近は外資系金融機関の支店閉鎖も増えているとのことで、今後、空き室率は更に増加するのではないでしょうか。
 
またこの時期、クラスノヤルスクではメドベージェフ首相も出席の、“第10回エコノミックフォーラム”が開催され、“地方における人材育成のあり方”というテーマも議論されたようです。長年の“もの作り”放置(2012年のGDPの伸びが3.5%の中で、製造業の伸びは0.5%です)の状況で、若手技術者が育っていない本当の背景をいまこそ認識すべきであると思われます。

 
2013年03月01日
       モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
昨年末は、モスクワの気候が突然マイナス25度の寒さになるなど厳しいものでしたが、今年はマイナス数度のなかで穏やかな新年を迎えております。今年の年末年始の休日は1231日から1月8日までが連続で、ここ数年の長い休日からは少し短いものとなりましたが、それでもほとんどの企業の幹部が113日まで休暇をとっていることもあり、ビジネスは例年通りのスロースタートとなっています。
 
昨年は春先に大統領選挙が行われたこともあり、年末から正月明けにかけて、かなり緊張した状況が続き、以前レポートでもお伝えしましたように、マイナス20度の中での反プーチン集会では大勢の人々が選挙制度の改革を訴えていました。今年はそれに較べ平穏な正月明けですが、それでも、113日モスクワ市内等で“アメリカ人との養子縁組禁止の法律に反対する”集会がかなりの規模で行われました。日本人からみると理解しづらいテーマですが、昨年末アメリカが人権侵害に関わったロシア政府関係者の入国を制限する法案を成立させたことへの対抗措置として、ロシアの子供たちがアメリカ人に養子として迎えられることを禁止するというものです。
 
ロシアでは、ホームレスの子供や、孤児の数が大変多く、外国の家庭との養子縁組も多いのですが、そのうちアメリカ人が毎年35%にも達する状況があるようです。従って今回の政治的な措置で子供を巻き込む結果に対し多くの市民の反感を招いているというのが現状です。筆者も10数年前モスクワの国際ロータリークラブ設立に参画しましたが、その活動の大半がホームレスや孤児院へのサポートであることからも、この国には石油を中心とする経済の繁栄の陰にあるさまざまな社会問題があることを見過ごすわけにはいきません。当地滞在の邦人にはほとんど関心がないようですが、ロシアのさまざまな現状を理解することはビジネスを展開する上でも極めて重要であると思われます。
 
昨年始め石油価格が1バーレル100ドル前後であった状況に比較し現在の90ドル前後はやや経済の成長を鈍化させているようですが、一方では国内生産を伸ばすための方策も動きだしてきつつあるようです。
 
何度もお伝えしておりますが、工業製品を含め、完成品の海外からの輸入に歯止めがかからない状況は、それが更につづけば、国内にある生産工場がますます空洞化していくわけで、政府も出来るだけのサポートをしようといろいろなプロジェクトを立案し、少しずつですが、具体化が見えてきているようです。昨年の大統領選挙の前後に約束された政策がようやく動きだし、今年は就労人口の増加につながることを期待したいものです。

 
2013年02月01日
年末のロシアにはいつも色々な動きがあります
       モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
先月は初冬のロシアはさほど厳しくない寒さであるとお伝えしましたが、この一週間であっという間にマイナス10度、マイナス15度と温度が下がり、来週はマイナス25度となるかもしれないという予想です。道路も凍っているところも多く、事故も増えており、年末の渋滞がさらに厳しいものとなっています。
 
既にお伝えしましたように、スピード違反の取り締まりが監視カメラをベースに行われて1年が経過し、筆者も書留で違反請求を受けることもあるのですが、今般とうとう駐車違反に対する請求書が写真と共に書留で送りつけられて来ました。かなりの金額に唖然としていますが、監視カメラベースの取り締まりはとどまるところを知りません。この時期道路の雪かきもあり、駐車できるところが少ないのですが、モスクワで果たして、まともに駐車できるところがあるのか理解に苦しみます。
 
この寒さのなか、先週土曜日には、プーチン政権に反対する若者の集会、デモがモスクワ中心部であり、無許可であったことから、大勢の若者が逮捕されたようです。年末のモスクワはいろいろなことがあり、これが師走の風物詩なのでしょうか?
 
このような中、1212日、日産ルノーがロシア最大の自動車会社アフトバスの経営権を取得したとの発表がありました。株式の過半数の取得は完了していたとのことですが、製造、販売権の大半を日産ルノーが握ったこととなり、市場占有率を30%から40%に引き上げようと、新型車の開発、製造に拍車がかかると思われます。最近は、アフトバス向け部品製造を目指す設備投資商談も活発となっているようで、当社関係でも、自動車関連部品の設備商談は増加しつつあります。
 
先月はアフトバス社本社のある、トリアッチ市での“トリアッチ−未来の町”と題するセミナーの開催についてご紹介いたしましたが、地元のトリアッチ市としても、部品製造に対するインフラ整備を積極的にバックアップしていく方針であるようです。
 
また、先般当地の日本大使館より、ロシア在住の邦人数の発表がありました。昨年は2,326名、本年は2,450名と滞在邦人数は100名程のわずかな増加となっていますが、このうちトリアッチ市在住の邦人は昨年12名であったのが、今年は54名となんと40名以上の増加となっています。モスクワ在住の邦人数は昨年1,653名、本年は1,667名とわずか10名程度の増加にとどまっていることを見ても、特筆すべきであると思われます。
 
サンクトペテルブルグの治安の悪さは既に何度もお伝えしておりますが、トリアッチも治安は決して良いわけではありません。広大なロシアにおける地方の交通インフラは依然として厳しいものがありますが、地方に展開するものづくり現場への日本企業の進出は着実に進んでいるようです。