モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
世界陸上が開催された暑い8月から一転、9月に入るや、まるで日本の冬のような気候となり、モスクワでは、昼間でも10℃前後の時折雨模様の気候がすでに半月も続いています。今年は4月末の30℃近い突然の高温気候が8月まで続きましたが、9月はロシア特有のどんよりした秋に突入しました。
夏休み期間中、比較的空いていた道路も朝夕激しい渋滞状態となっており、交通事故も相変わらずの毎日で、今後更に運転には注意が必要です。
いうまでもなく、ロシアは西から東に広大なテリトリーを有していますが、今般、物流のそれぞれの要所である、フィンランド及び極東を訪問する機会がありその広さと課題を改めて実感することとなりました。
フィンランドのロシアに近い港街KOTKA(コトカ)は昔からロシアとの物流の要衝で、港湾設備及び多くの倉庫が立ち並んでいます。
今回コトカには、モスクワから長時間かけて夜行列車で訪問しました。以前はかなりの物流がありましたが、その量がかなり減っているように見受けました。ロシアに向かうルートが西欧、バルト、北欧と各地を起点とするように“分散”してしまったことにもよるようですが、8月号でレポートしましたように、最近ロシアの景気、特に一般消費が低迷していることが大きい原因であるようです。
NOKIAに代表されるようなIT大国として活況を呈した以前の面影はなく、特に地方都市では厳しい状況があるようです。
また最近、極東のウラジオストック、ナホトカの客先を訪問しました。
ウラジオストックは先般開催のAPECで、空港は新しく建て替わってはいましたが、80万の人口を有する市内は大渋滞で、海岸近くの坂道の多い道路もあまり整備されておらず、朝夕のラッシュは、モスクワ並みです。
街を走る乗用車の殆どが右ハンドルの日本車で、駐車場の出入り口の料金システムも右ハンドル車用に設定されているのには、驚きでした。ここからナホトカまでは150kmの距離ですが、日本海がところどころに見え隠れする海岸線に沿った道路は十分整備されておらず、APECの準備でインフラを整えた際、何故同一経済圏にある隣町のナホトカにも配慮しなかったのか、極めて残念です。
ナホトカは、静かで落ち着いた漁業と港湾の街ですので、道路が整備されれば今後更にウラジオストックと一体になった発展が期待されると思われます。モスクワへの帰りのフライトには、大勢の子供達が搭乗していました。水害のハバロフスク近郊から、親元を離れ、ボランティアに付き添われ、モスクワに避難する様子でしたが、アムール川の洪水のすごさを目の当たりにした思いです。1日も早い復興が望まれます。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
先月はロシアの正月明けが平穏なものであることをお伝えいたしましたが、2月には既にさまざまな出来事がありました。
2月15日開催のモスクワG20(財務相、中央銀行総裁会議)は予定されたもので、議論の中身も、円安ではあるが当面現状を注視していこうという雰囲気で終了したようですが、ちょうど同じ日に世界中に驚きのニュースで伝えられた“隕石落下”のニュースはさすがにロシア中に大きな衝撃として、連日伝えられています。
ウラルの南にある、鉄鋼業中心の100万都市チェリャービンスク市の近郊に15日昼間、大きな衝撃波とともに“隕石”と思われるものが飛来し、雪と氷で覆われた湖に飛び込み直径10mぐらいの穴が開いてしまっています。
世界で最も大きな国土を有する国だけに、大都市のすぐ近くでも、回りには誰も住んでいない大きな湖があり、直接人家に被害があったわけではないのですが、すさまじい衝撃波で、学校、体育館等の窓ガラスが割れ、多くの人が破片、落下物等で怪我をし、修復作業に大きな予算と人手で対応中とのことです。
さらなる出来事は、モスクワ市が、突然“障害者、若年者を規定以上に雇用していない企業は外国人雇用枠を削減する”という通達を出し、そこには弊社を含む50余りの日本企業のリストも添付されていたため多くの企業に衝撃が走りました。その後、この基準の対象の会社は100人以上の従業員を有する会社であることが分かり、問題とされる日本企業は4社に絞られたようですが、突然の通達はその意図が未だ理解できていません。外国人雇用枠を削減するということは、弊社及び多くの日系企業事務所では、所長の滞在ビザが延長されない、すなわち事務所を閉鎖せざるを得ないということを意味します。突然どのような規則が降ってくるか分からない環境は外国の企業としては、安心して経営に専念できない訳で、ロシアで駐在する外国企業の数が増えないということにもつながっています。
さて、最近モスクワのオフィスビル需要に関するデータが公表されましたが、現在オフィスビルの空き室率が11%と、金融危機の2008年の7%を大きく上回っています。ロシアの大都市では“バブル期”の2005年ごろオフィスビルが一斉に建設され始めたものの、工期が予想の倍以上にもなり、また完成時には供給過剰という現状が上記の数字にも表れているようです。最近は外資系金融機関の支店閉鎖も増えているとのことで、今後、空き室率は更に増加するのではないでしょうか。
またこの時期、クラスノヤルスクではメドベージェフ首相も出席の、“第10回エコノミックフォーラム”が開催され、“地方における人材育成のあり方”というテーマも議論されたようです。長年の“もの作り”放置(2012年のGDPの伸びが3.5%の中で、製造業の伸びは0.5%です)の状況で、若手技術者が育っていない本当の背景をいまこそ認識すべきであると思われます。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
先月は初冬のロシアはさほど厳しくない寒さであるとお伝えしましたが、この一週間であっという間にマイナス10度、マイナス15度と温度が下がり、来週はマイナス25度となるかもしれないという予想です。道路も凍っているところも多く、事故も増えており、年末の渋滞がさらに厳しいものとなっています。
既にお伝えしましたように、スピード違反の取り締まりが監視カメラをベースに行われて1年が経過し、筆者も書留で違反請求を受けることもあるのですが、今般とうとう駐車違反に対する請求書が写真と共に書留で送りつけられて来ました。かなりの金額に唖然としていますが、監視カメラベースの取り締まりはとどまるところを知りません。この時期道路の雪かきもあり、駐車できるところが少ないのですが、モスクワで果たして、まともに駐車できるところがあるのか理解に苦しみます。
この寒さのなか、先週土曜日には、プーチン政権に反対する若者の集会、デモがモスクワ中心部であり、無許可であったことから、大勢の若者が逮捕されたようです。年末のモスクワはいろいろなことがあり、これが師走の風物詩なのでしょうか?
このような中、12月12日、日産ルノーがロシア最大の自動車会社アフトバスの経営権を取得したとの発表がありました。株式の過半数の取得は完了していたとのことですが、製造、販売権の大半を日産ルノーが握ったこととなり、市場占有率を30%から40%に引き上げようと、新型車の開発、製造に拍車がかかると思われます。最近は、アフトバス向け部品製造を目指す設備投資商談も活発となっているようで、当社関係でも、自動車関連部品の設備商談は増加しつつあります。
先月はアフトバス社本社のある、トリアッチ市での“トリアッチ−未来の町”と題するセミナーの開催についてご紹介いたしましたが、地元のトリアッチ市としても、部品製造に対するインフラ整備を積極的にバックアップしていく方針であるようです。
また、先般当地の日本大使館より、ロシア在住の邦人数の発表がありました。昨年は2,326名、本年は2,450名と滞在邦人数は100名程のわずかな増加となっていますが、このうちトリアッチ市在住の邦人は昨年12名であったのが、今年は54名となんと40名以上の増加となっています。モスクワ在住の邦人数は昨年1,653名、本年は1,667名とわずか10名程度の増加にとどまっていることを見ても、特筆すべきであると思われます。
サンクトペテルブルグの治安の悪さは既に何度もお伝えしておりますが、トリアッチも治安は決して良いわけではありません。広大なロシアにおける地方の交通インフラは依然として厳しいものがありますが、地方に展開するものづくり現場への日本企業の進出は着実に進んでいるようです。