モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
初冬のロシア、特にモスクワは気温もさほど氷点下の厳しい気候ではなく、足踏みをしている状態ですが、時折雪もちらつき我々にとっては十分に寒い季節となっています。最近はプーチン大統領の体調に関する報道が活発となっていますが、大統領も生身の人間であり、先月60歳となった年齢と共にいろいろなことがあるようです。 先般はサンクトペテルスブルグ市内の治安の悪さを示す体験レポートをお送りいたしましたが、モスクワやサンクト等の大都市近辺での製造業展開にはいろいろ制限もあり、伸び悩んでいるようです。一方地方都市の中には、州政府のバックアップの下、積極的に外国企業の受け入れの準備を推進し、成功例も増えています。 例えば、モスクワから約150km 南に位置するカルーガ州は、2000年代初めより、外国の自動車メーカーの現地生産の受け入れ態勢を積極的に整え、その結果、フォルクスワーゲン、三菱、プジョー等の生産工場立ち上げが実現、その他自動車関連部品生産等順調に稼動も始まっています。ロシアの部品産業の多くの会社も、この近辺に、生産拠点を移しているようで、日本、欧州のメーカーの進出も更に進むと思われます。 一方ルノー日産が出資を行ったロシア最大の自動車工場AVTOVAZのある、ボルガ流域のトリアッチ市は、12月6日―7日“トリアッチ未来の町”という表題の大規模なセミナーを初めて開催する予定で、AVTOVAZ社はもとより地元の企業も参加し海外の企業の参加を呼びかけています。このセミナーの詳細はhttp://future.tgl.ru/ のサイトでご覧になれます(英語での表示もあります)ので、紹介させていただきます。このセミナーでは見本市も併設され、催しへの参加申し込みは直前まで可能とのことですので、現地の関係企業との提携に関心をお持ちの方はコンタクトされてはいかがでしょうか。トリアッチ市はエコノミックエリアという特別地域も用意し、外国企業の受け入れを積極的に推進しようとしており、カルーガ市等他地域に遅れをとるまいと、対抗する姿勢を見せています。 その他モスクワとサンクトを結ぶ新幹線が停車する、ニージヌイノブゴロド市やトベーリ市でも最近は欧州、日本の企業の進出が数多く見られ、ロシアもいよいよ地方が積極的な役割を果たす時代となりつつあります。 しかし、その他の中小都市の多くは、アクセスも不便なところが多く、政府も2014年開催のソチ冬季オリンピックや2018年ロシア各地の会場で開催されるFIFAサッカーワールドカップを機に鉄道の近代化、飛行場の整備、中距離用航空機の増産等地方の活性化に取り組みつつありますが、広大なロシアの大地の各地が有機的に結ばれるには、まだまだ相当な時間を要するのではないかと思われます。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
秋になると、モスクワ、サンクトは朝夕の冷え込みが厳しくなりましたが、10月に入ると更に寒くなり、人々も、コートを羽織り、これから長く続く冬の到来となりました。 9月までは企業、工場の責任者が交代でとる夏期休暇の影響で、仕事の話がなかなか進みませんでしたが、10月になり、すこし具体的な話も出来るようになりつつあります。 それにしても、7月からの3ヶ月のビジネス空白期間は特に物づくりにとって、大きなマイナスであろうと思いますが、製造工場の関係者はなににつけても、ほとんど諦めムードであり、積極的な話を聞くことがほとんどありません。競争力をつける為、古くなった設備の購入を検討しているところが多いのですが、銀行の融資条件が極めて厳しく、資金繰りが整わないため、計画は早くも来年以降に持ち越しと決めてしまったところが、多く見られるようになっています。 ところでサンクトペテルスブルグはロシア第2の商業、工業都市ですが、3月の大統領選挙後、女性知事が上院議員議長として、プーチン大統領の近くに異動、ところが後任の知事は、ほとんど事務決裁をしない為、我々の客先の工場移転計画も3ヶ月以上許可がとれず、計画実施が完全にストップ。このような話があちこちで聞かれます。一時は欧米、日本の自動車工場の案件が目白押しで大きな期待と共にかなり賑わっていましたが、日本からの駐在員もむしろ減少しているようです。行政の停滞に加え、以前にも何度か実体験を紹介しましたが、サンクトペテルスブルグの町の極端な治安の悪さもその理由としてあるのではないでしょうか? ここ数年外国からの観光客等を狙ったスリ強盗団が野放し状態となっていますが、その状態は相変わらずで、先日、薄暮の時間、街の中心部にあるネフスキー通りを歩いていた我々男性4人を、数人のスリグループが突然襲ってきました。町の目抜き通りにあるデパートビルに入ろうとした我々に、数人の男が突然近づいてきたかと思うと、筆者のみを前後に挟み、ビルの中に引き込もうとしたのです。事前になんども治安の悪さを話題にしていた我々の中の一人が機転を利かし、全員をビルの中に押し込んでくれ、ビルの中でもみ合い状態となりました。予期しない展開にスリ団は逃げに入り、その際、筆者の内ポケットから書類の束を鷲摑みにしましたが、背広が裂けてしまった以外は、金銭の被害は免れました。ビルにはカメラもあるので、日本人がこれ以上犯罪に巻き込まれないよう、翌日、日本領事館に本件のトレースを提案したのですが、“あなたが、犯人の特定に関心があるのであれば、自分で警察と話をしなさい。当地では犯罪が多いので、領事館としては、とてもこのようなことに関わっていられない。”といわれ、度肝を抜かれました。 企業の進出及びビジネス遂行の為に最も大事なことは、駐在員及び家族の安全です。日本領事館にはこのことをしっかり理解してもらいたいものです。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
今年のロシアの夏は高い気温でスタートしましたが、後半はモスクワ、サンクトペテルスブルグ地域では、かなりの低温が続き、9月に入ると、朝は10℃以下の日も見られ、日本の冬の気候に近いものとなっています。 この間、8月末にモスクワでは、国際モーターショーが開催され、その後極東ではAPECの開催といろいろな催しが続きました。 国際モーターショーでは、久しぶりに内外の多くの自動車メーカー、及び自動車関連部品メーカーが参加し、連日かなりの賑わいを見せておりました。 特にルノー日産グループは、資本参加した、ロシア最大の自動車メーカー“AVTOVAZ”に隣接し、大きなスペースで参加していましたが、来年よりAVTOVAZで生産される予定の、“ダットサン”モデルは、日産のスペースに展示され、現段階では、3社がそれぞれに個別にプレゼンテーションを行っている形となっています。 ロシアの乗用車の販売は、近々年間300万台に到達するといわれていますが、首都圏での朝夕のラッシュを見ても、急激に乗用車の販売が増えるとも思われません。現状でも販売は微増であるとのことです。現地組み立て生産では、部品の確保が引き続き大きな課題であるようです。一方交通違反の摘発では、カメラ等のIT機器の設置が急速に進められています。スピード違反はもちろん、駐車違反等もカメラで撮影し、摘発され罰金の請求書が送られてくるというシステムが進められており、ようやく交通渋滞の緩和にも効果があがりつつあるようです。 日本ではあまり報道されなかったようですが、9月初旬に極東のウラジオストックでAPECが開催され、連日プーチン大統領のパフォーマンスが大きく報道され、内外から、いろいろな批判も出ているようです。プーチン大統領はAPECへの途中シベリアに立ち寄り、軽飛行機に同乗して、袖黒鶴を越冬地へ誘導することに一役買ったということが、繰り返し報道されました。後日行われた共同記者会見でロシア人の記者から、“一緒に飛び立った鶴は、全体の63%であったことをご存知ですか”という発言が出るなど、大統領選挙結果と重ね合わせたやり取りに、唖然とした人も多かったのではないでしょうか。支持率は依然として特に気になるようです。 先日、9月15日モスクワ市内では、久しぶりに現政権批判の集会が開かれ、人数は減ったものの、数万人が参加し“反プーチン”を叫んでいる様子が報道されました。欧米でも連日報道されていますが、大統領選挙批判の音楽を大聖堂で演奏した、女性グループが禁固2年の実刑判決を受けたことが、当地ロシアでも話題となり、今後の成り行きが注目されています。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂 現在ロシアは夏休みシーズンの真っ只中で、朝夕もいつもの渋滞に比べ、大通りの車の流れも極めてスムーズです。 ロシアの人々は規模の大小はあるものの、郊外に所謂ダーチャという小さな“別荘”を持っている人が多く、最近では夏の間、家族はこの郊外の“別荘”に住居を移して、そこを拠点にモスクワ等の大都市中心部に電車等を乗り継いで通っているという傾向も増えているようです。この為、朝夕の無用の交通渋滞も緩和された状態となっておりますが、今後ともこの状態が続くことを願わずにはおれません。 一方、既にかなりの飽和状態といわれていますロシアの乗用車市場ですが、日本車をベースにした動きも一段と加速しつつあるようです。 極東で生産がスタートするMAZDA等の日本車の生産に加え、ロシア最大の乗用車メーカーAVTOVAZ社は、主要株主となったルノー日産グループが昨年の“LARGUS”の発表に続き、NISSAN BLUEBIRDのラインオフの発表を行いました。これは日産のALMERAの車台をベースにしたものといわれ、8月28日― 31日にモスクワ郊外の見本市会場で開催される、“INTERAUTO”の会場で展示発表される予定とのことです。昨年のINTERAUTOの展示会では、“LARGUS”の発表で話題を呼びましたが、今回、NISSAN BLUEBIRDまたはDATSUNブランドのお披露目となれば、いよいよAVTOVAZ社を拠点とした日本車の本格生産も近いものとなると思われます。 しかしロシアでは、部品産業の遅れは依然深刻なものがあり、今後部品の品質の整備がどのように行われるのか、引き続き大きな課題となっています。 この分野では日本が取り組むケースはまだまだ少ないようですが、最近トルコの会社がロシア最大のトラックメーカー“KAMAZ”社を訪問、天然ガスをベースにしたエコカーの共同生産を提案、その為の部品生産の提案を行ったとのニュースが大きく取り上げられています。ガソリン及びディーゼル燃料が高値で推移する中、天然ガスを燃料とする次世代エンジンの開発が検討され、先端的取り組みが始まれば、ロシアの自動車産業もいよいよグローバルな展開となる日も近いように思われます。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
前回のレポートでも触れましたが、6月には石油価格がかなり大きく揺れ動きました。ユーロ危機も重なり、ロシアのルーブル通貨も乱高下したわけですが、これらの動きに一番神経を尖らせたのは、プーチン政権だったのではないでしょうか? 最近では大手石油会社の幹部を集め、近々“大統領直轄の資源エネルギー委員会”を設けるとの通知を出しましたが、これは電力や石油等エネルギー関係の株式売却を行う場合には大統領の許可が必要であることを意味するものです。 現在夏休みシーズン真っ只中で、ビジネス商談も中休みの状況ですが、この間に政府は着々と国家管理体制の強化を進めているようです。 産業の活性化を目的に“大型民営化計画”が打ち出され、メドベージェフ前大統領がモダニゼーション(MODERNIZATION)といういわば“産業改革推進”の方針を出してまだそれほど時間が経っていませんが、今後は経済も国家管理を強めていくようです。 大統領選挙の期間中、プーチン氏が大企業、工場に直接出向いて約束した、融資枠の拡大や、工場活性化のための国家の資金サポートプランも、それがどのように、いつ実現するのか、不透明なまま時間が経過していきます。5月末から古い設備の買い替えの話が多く聞かれたのですが、実現のテンポは極めて遅く、当方も契約合意した案件ですらなかなかリアライズしないのが現状です。銀行が融資する条件も厳しく、ユーザーが設備購入を実行したいと思ってもなかなか銀行との交渉がうまく進まないようです。 このような状況のなか、6月には更に、ガス、水道、電気等の“公共料金の値上げ”が後ろ倒しで発表されました。例年は1月に発表されていたのですが、大統領選挙直前のタイミングではなく半年延ばしたという次第です。今後はこれに続くさまざまな価格が上昇することとなり、一般市民の不満も膨らみますが、消費が鈍化することも予想されます。 公正な選挙を求めて運動を展開していた“反政府勢力”の活動等に対しても、デモで交通妨害をした場合の罰金増額に加え、“刑法改正”、“NGO関連法案”、“インターネットサイト規制法案”等の施行により、民主化が制限されつつあります。“NGO関連法”は、外国から資金援助を受ける非政府組織(NGO)を“外国のエージェント”としてその活動を監視する法案で、今後NGOの配布物には“外国のエージェント”と明記させられるとのことです。 政府は国家管理体制を強化し、石油、ガスの輸出代金の利益はまずは国庫にとの方針ですが、約束された産業の活性化の先延ばしや、雇用の不安定化(現在失業率は6%以上)、インフレ再燃と続いていけば、今後さらに大規模な反政府勢力の運動が予想され、“規制法案”だけでこれらの動きを封じ込めることが出来るのかどうか、予断を許さない状況が続きます。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
最近のロシアは日本の梅雨のように、天候が不順となっています。朝または夕方に必ず雨が降るという具合で、気候は日本の梅雨に近いものがあります。 ロシアでは政治、経済も同じように荒れた状況が続いています。 まずは、先般ロシアの通貨ルーブルが乱高下しました。石油の価格が下落し、80ドル近くになると、ルーブルも急に下がり、1ドルが34ルーブル近くとなる状況です。石油価格が下落すると、ロシアの石油関係者のルーブルでの手取りも目減りする為、ルーブル価格が操作されるという見方ですが、2008年にもまったく同じ状況が起きたことが思い起こされます。この時はその後リーマンショックで大きな不況へと続き、回復に数年を要したことは、当地で会社を運営し、仕事をしている身には昨日のことのように思い起こされます。 今回はユーロが大きく揺れましたが、その後石油価格も多少上昇し、為替も安定しつつあるようです。ロシアがいかに石油ビジネスに依存しているか、あらためて実感させられます。ロシア経済そのものは、今年の第1四半期のGDP成長率が前年同月比4.9%増と予想を上回る結果となり、堅調に推移しているのですが、それならばルーブルが何故5%近くも下落するのでしょうか。 現地で事業を展開した場合、利益や配当を海外に送金する場合、予想を超えて目減りするリスクが常にありますが、ロシアは特にその傾向が強いように思われます。 もう一つは、4月のレポートでも指摘しましたが、すっきりしない選挙のやり方で誕生した新政権に対する不満は根強く、むしろマグマのように、吹き出てきつつあるようです。 日本でも報道されたようですが、ロシアの独立記念日を挟む連休の最後の日の6月12日、市内で大統領就任式前日に続く、大規模な反政権派の集会が行われました。今回やや不安はあったのですが、状況確認の為、当日現場を見てきました。 集会には数万人程集まっていましたが、比較的平穏なムードのように見られました。しかし、周りを取り囲む警察、軍隊の数は極めて多く、厳重な警戒態勢がしかれていました。写真撮影を試みると、軍隊に“あっちに行け”と怒鳴られる始末です。 既に選挙終了後3ヶ月以上経過し、新政府もスタートしましたが、変わりばえしない布陣、これが何年も続くのか、ということに対する国民の不満も益々大きくなっているようです。最近議会はデモで交通を混乱させた場合、300−500倍の罰金を課すというようなデモ規制法案を可決し、デモに参加するなら財産を没収するぞと言わんばかりですが、アラブの例でもありますが、大きなうねりはそんなものでは抑えられるものではないように思われ、当分ロシアの政治状況は予断を許さないものがあると思います。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂 前回お伝えしましたように、ロシアでは4月中旬、突然24度にもなる暖かい陽気となり、それは5月初旬まで続きましたが、その後、突然の寒波の襲来で朝晩10度以下の肌寒い陽気となり、またコートを着て歩く人の姿も見られるようになりました。 このように変化の激しい陽気のロシアですが、祝日週間の中、5月7日、新大統領プーチン氏の就任式が行われ、いよいよプーチン体制が始動しました。 5月9日は戦勝記念日で、赤の広場での軍事パレードも行われましたが、今年は就任式を含め、異例の厳戒態勢で行事が行われました。大統領の再選に反対する大勢の人々が就任式当日の5月7日、10万人規模といわれる反対集会を行い、今回は大勢の逮捕者も出たとのことです。前回の就任時のような、若者を中心とする熱狂的プーチン支持者集団も影が薄くなり、大勢の人々が今後のなりゆきを見守っているというような雰囲気さえ感じられます。 このような状況ですが、経済面では、日産・ルノーが600億円を投資し、ロシア最大の乗用車製造メーカーAVTOVAZを買収したニュースが引き続き大きなインパクトを与えています。いよいよ日本の技術も生かされたグローバルレベルの品質の乗用車が製造されるのか、そのためにAVTOVAZ社及び関連部品メーカーの改革がどのように行われるのか、という期待も高まりつつあります。世界各国の自動車部品メーカーのロシア進出も加速度を増していますが、WTO加盟により2018年には輸入の優遇措置も終了する予定であることから、現地生産の案件が特に増えつつあるようです。 日本製品全般に対する信頼はますます高まっており、工業製品、生産設備については、既に何度もそのニーズの高まりの理由について説明させていただいておりますが、子供用雑貨製品を中心とする日用雑貨、食品関連製品の需要も急速に高まっているように思われます。大きな理由は、日本製品には安全性に配慮した製品が特に多いことが再認識されているようですが、健康志向が高まるなか、食の多様化が急速に進んでいることも、背景にあるようです。同じ商品であれば、絶対日本製品を買いたいという声をよく耳にします。 日本の大震災、福島原発事故の影響でこれらの商品の輸入制限も続いており、諸手続きも簡単ではありませんが、ロシアにおける日本製品のニーズがますます高まること、モスクワには2000万人近い消費人口のあることを思えば、このチャンスを逃す手はないのではないでしょうか?
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
今年のロシアの冬はかなり長いものとなりました。 前回大統領選挙の前、マイナス20度の中で大規模な反プーチン集会が開かれたことをお伝えいたしましたが、このように今年のロシアの冬はかなり厳しくまた、長いものでした。4月初めまで時々雪が降るような気候が続いていましたが、先週末から急に暖かくなり、本日(4月17日)も昼間は24度まで上がり、突然の春の到来に皆驚いています。 大統領選挙が終了し、しばらくたった現在、ビジネスもかなり活況を呈してきています。既に報道で広く紹介されましたが、ルノー日産がロシア最大の乗用車製造メーカーAVTOVAZ社の過半数の株式取得で合意し、4月4日、年産能力35万台のミニバン“LARGUS”の製造ライン完成の式典が、プーチン氏出席の下、行われましたが、最近は、自動車部品製造メーカーからも部品製造に関係する引き合いが弊社にも寄せられて来るようになりました。昨年までは、自動車産業に関連するビジネスは、円高の影響もあり、なかなかお目にかかることはありませんでしたが、最近はこのような一連の動きもあり、特に日本の技術に期待する案件が増えてきたように思えます。 先般モスクワから南に400km以上離れた村にある、電子部品の製造メーカーを訪問する機会がありました。関連する設備の商談のやりとりを数年前から、行ってきたのですが、最近になって、急に契約に向けた準備に入りたいといって来た為、その真偽の程を確かめるべく夜汽車に乗って工場を訪問したという次第です。 訪問して、分かったことですが、この会社の経営者が最近、交代し、古くなった設備を効率の良い設備に置き換え、多品種中量で、かつ生産性を上げて行くという方針が打ち出されたとのことです。打ち合わせでも盛んに強調されたことは、日本の生産方式をできるだけ導入したいとの希望があるとのことです。また実績を上げた従業員に対し、待遇面で、どのように対応すればいいのか、日本での人事評価制度の詳細を知りたいという話まで出されました。 今後このような客先が更に増えることを期待したいと思いますが、この背景には、ロシアでは、長年生産が停滞していたため、ベテラン労働者が若年労働者に技術を伝承する機会がほとんどなく、その為人材不足が深刻な問題となっていることがあるようです。 ロシアの大都市では、若者のアルコール依存性の問題や暴徒化した、いわゆる“スキンヘッド”(※)が外国人を襲撃するという報道が後を絶ちませんが、より多くの若者がロシアが伝統的に持っている“もの作り”に関心を持つことを願わずにおれません。 ※ 外国人排斥を標榜するスキンヘッドの若者集団
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
3月4日、ロシア大統領選挙が終わりました。これまで大きく注目されていた割には、意外とあっさり結果が出てしまいましたが、余震は当分続くと思われます。 選挙直前になって、プーチン氏のコメントとして、“要するにすべての投票所にカメラを設置すればいいのだろ”いうメッセージが流れたこともあり、日本でもロシア大使館経由で2月後半になって30万個のカメラを至急集めて欲しいとの要請があったそうです。支払いの方法、購入機関が不明なまま、日本の関係者はあっけにとられた状況となり、日本からの映像カメラの輸出商談は殆ど実現しなかったようですが、選挙会場には、SKYPEで使われるような焦点も定まらぬ簡易カメラが大量に設置されたようです。 選挙後3月5日のロシアの新聞等では、“国民みんなが選挙を見ていた”とのタイトルが目立ちました。いかにも“公正な選挙”で、プーチン氏は63%前後の得票を得たとの印象で発表されたわけですが、当地では、選挙前、国有企業の従業員、及びその家族に対して、プーチン氏に投票するようにという、すさまじい圧力があったとの話が飛び交っていました。12月の下院議会選挙でのプーチン、メドベージェフ両氏が率いる統一ロシア党の得票率は40%ちょっとであったわけですから、63%を獲得するためには、なりふりかまわぬ方策をとったであろうことは、想像に難くありません。 勝利したプーチン陣営も今のところはあまり派手な勝利イベントは行っていませんが、プーチン批判をしてきたメディアを締め付け、その結果として、反プーチン陣営に対する反撃が強まりつつあります。こうした動きに対してロシアの多数の国民がこのまま大人しくしているとは、とても思えませんが、どうでしょうか。 一方、経済面では、選挙前、プーチン氏は国有の製造企業に対する、ばらまきともいえる、大型の融資等の実行を約束していたわけですから、これがいよいよ実行されるのではないかとの期待感も盛り上がりつつあるようです。 今年の後半には、WTOの正式加盟が承認されると思われますが、工作機械等、ロシアがあまり本格的に製造していない機械類等の品目のいくつかは、従来ほとんど関税がゼロであったものが、夏ごろには10%以上になるとの発表もされています。WTO加盟後は、関税率は下がるものと理解していたのですが、今後ロシアでは、むしろ保護主義が強まるのではないかとの印象を強くしております。 プーチン氏は「ユーロアジア」という東に向かう政策を打ち出していますが、この政策によって日本を含むアジアとの関係が強まると思われますが、日本の得意分野でもある“もの作り”での貢献がいよいよ活発になることを期待したいものです。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
12月は比較的温暖な初冬のロシアでしたが、1月後半になると連日マイナス15度―20度とロシアの冬らしい気候となり、早朝エンジンがかからず他車のバッテリーと繋げてもらって、車を始動させるという風景があちこちで見られるようになっています。 既に報道されておりますように、12月の下院議員選挙の不正に対する抗議集会は12月に何度か開催され、2月に入ると、3月4日の大統領選挙を前に、プーチン政権長期化反対の動きがますます大きなうねりのようになってきており、報道も連日熱を帯びてきております。 12月24日の大規模集会に続き、先日2月4日、ロシアのあちこちの大都市で集会が開催されました。モスクワでも、クレムリンに近い広場で抗議集会が行われるとのことで、筆者も取材に行ってまいりました。 この日の朝はマイナス20度といつにも増しての寒さで、このような状況では、集会参加者はかなり少なくなるのではとの予想もありましたが、添付写真でもお分かりのように、主催者発表12万人という大規模なものとなりました。 さすがにマイナス20度の中で1時間立っていると、筆者は体の芯から凍えてしまいましたが、大勢の参加者は、さすがロシア人らしく時には陽気に、整然と、大統領の交代を強く望む気持ちを表していました。かなり高齢の女性に“寒くないですか?”と声を掛けたところ、“普段、距離スキーで散歩しているから、平気”と余裕の表情です。 この日、別の場所では、プーチン支持派の大規模な集会も開かれたとのことですが、憲法を改正し、次期大統領の任期が4年から6年に延びるというお膳立てがされていることにも、大勢のロシア人は呆れているようで、2月26日には更に大規模なデモ、集会が予定されているとのことです。(2月17日現在) 大統領選挙では、プーチン氏が過半数を獲得することが難しく、対立候補との決戦投票も予想されるようになりつつありますが、選挙結果がどうなろうと、プーチン政権長期化に対する国民の反発は相当大きなものがあるようです。このような状況の中、ロシアの今後の情勢はますます目を離せない状況となってきています。 プーチン氏が大統領になった場合は、現在真冬でも続けられている、“夏時間”を本来の冬時間に戻すとの公約も掲げられているようです。どの候補者が大統領になっても、早く冬時間に戻り暗闇の中で1時間も早く起床しなくてもいい日が来ることを期待せざるを得ません。
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