モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂 以前にもお伝えしましたように、ここ数年ロシアでは、年末年始は10日間もの長い休日となっています。 旧暦(ユリウス暦)では1月7日がクリスマス、1月13日が新年であることや、年末ぎりぎりまで通常の勤務が続くこと等より、新年の休暇を長期に設定したと思われますが、一般の市民の多くは正月に海外で休暇を取れるわけではなく、銀行等、役所もまったく機能していないため、大変な迷惑であること、また、昨年より夏時間がそのまま継続され、朝はまだ暗いうちに起きなければならない等々、現政権に対する不満も相当なものとなっているようです。 また、3月4日に予定されている大統領選挙を目前に、例年に比べ、今年の1月は緊張感が高まっているように感じられます。2月には、再び大規模なデモ、集会も予定されています。 商売関係では、例年、1月中旬まで殆どの企業の幹部が休暇を海外で過ごしているため、1月後半までまともに仕事の話ができる雰囲気ではなかったのですが、今年はやや状況が異なるように思え、休暇明けの10日直後より商談のやり取りがかなり活発になっています。 昨年のレポートでは、長い休暇制度に加え、当地の人々が本質的に仕事をすることに熱心でないのではとの指摘もしましたが、今年の1月の状況は、今後の政府の政策の行方が不透明な中、自分の事業は自分で推進していこうというような意気込みさえ感じられます。 ロシア経済は、原油価格が1バーレル100ドル前後の高水準で推移していることから、輸出が輸入を1600億ドルも上回り、外貨保有高も5000億ドル(約40兆円)とゆとりの数字となっています。このため、自動車を始め、何でも外国から輸入できるために、逆に国内のものづくりが長年停滞してしまっています。 3月の大統領選挙を視野に、プーチン首相は、昨年末から国内の主要製造部門における重要部品の製造に必要な機械設備に対し、多額の融資を約束しているとの情報が出ています。しかもこの融資の中には、返済が不要なものもあるようです。航空機製造、鉄道関連産業、造船、発電設備工場等の重要部門には、既に対象の部品を特定したこの特別融資の割り当てが行われるようで、積極的な商談もちらほら出てきています。 昨年12月24日のデモ集会に続き、2月に現政権、現選挙制度に反対する大規模なデモが予定されていますが、状況はまだまだ不透明です。しかし有力な対立候補が出てこない現時点では、プーチン氏が当選する可能性が高いと思われます。 しかしながら、ものづくりの復活には、少々の融資程度では直ちに効果がでるとは思われません。遊休設備や機械は相当錆付いており、これらを再び稼動させることは至難の業(不可能と言ってもよいほど)です。それにも増して、ものづくりの技術の伝承はいったいどうなるのか、心配されるところです。
モスクワ ビジネスサーター 岩本 茂 12月に入っても連日気温は零度近辺と本格的な冬を感じられないモスクワの今年の気候ですが、先日ようやく吹雪となり、まとまった雪が積もりました。しかしその後日中の温度がプラスとなり積もった雪もあっという間に融けてしまっています。ロシアの本格的な冬の到来はしばらくお預けの状態です。 このように穏やかな初冬のモスクワですが、最近ロシアでは世界が注目する大きな変化が起こりつつあります。 先ずは既に報道されていますように、申請から18年間を経てWTO加盟が正式に承認されたことです(12月16日)。国内での手続きを経て正式なものとなる見込みですが、今後は自動車を初め輸入関税が大幅に引き下げられることが予想されるため、日本製品のロシア向け輸出も今後大いに増加することが予想されます。 しかしロシアで本当に求められているものは既に何度も指摘していますが、物づくりの改革です。次期大統領と目されるプーチン氏はこの分野に対する国の投資を実現するのではないかという話を最近よく耳にしますので、プーチン氏にはこの点が大いに期待されているようです。 昨年のレポートでもご報告いたしましたが、例年の通り日本大使館領事部よりロシアに滞在する邦人の数が発表されました。昨年が2,203名、本年は2,326名と123名の増加となったとのことですので、ロシアビジネスに対する関心も徐々に高まりつつあるようです。しかし欧米各国のロシア在留者は数万人であることを見ると日本の企業の現地に根を下ろした地場のビジネス展開への関心はまだまだ低いと言わざるを得ません。 もう一つは、世界的に大きな関心事となりつつある、下院議員選挙での不正問題やプーチン氏の長期政権化に対する不満の動きですが、当地では、散発的な集会の報道は見られるものの、大きな混乱を予感させるものは今のところ特に見当たりません。しかし今後の収束の方向は未知数といえるようで、12月24日にはモスクワ市内で大規模な集会が予定されていますので当分目が離せません(12月20日現在)。なお、与党の統一ロシアの獲得支持率については、連日、ラジオで報道されていますが、50%を下回る数字が出てきており、新党結成の動きの攻防とも併せ、来年3月の大統領選挙には影響が出てくるかもしれません。 市内は、例年の年末の光景と同じように目抜き通りのイルミネーション、また相変わらずの交通渋滞と、選挙の不正問題や大統領選挙に対する目立った動きは感じられません。しかし、国民の多くがますます広がる貧富の差に不満を抱えていることも事実ですので、今後の動きに目が離せない状況が当分続くと思われます。
モスクワ ビジネスサーター 岩本 茂 連日ギリシャ、イタリアを中心とする欧州の金融危機が話題となる最近の情勢ですが、ロシアの経済は至って好調です。 自動車の売れ行きも順調に伸びているようで、今年の自動車の販売台数は260万台になる見込みとのことです。また輸入車の台数も1.5倍ぐらいに伸びつつあり、必ずしも純国産車の売れ行きが好調であるとはいえないようですが。 人口1600万人といわれるモスクワ周辺の渋滞は相変わらずで、特に冬は自動車通勤がピークになることもあり、毎朝郊外から通勤する車の渋滞はひどくなるばかりです。このような状態にもかかわらず更に車が売れることが不思議でなりません。郊外から都心に向かう大渋滞をみると、1時間半以上かけてでも車で通勤する人が多いわけでロシアの人々の忍耐力には感服するばかりです。 これらの人たちは朝、まだ暗いうちから出勤をすることになるのでしょうが、今年の冬は更に暗いうちから自宅を出なければなりません。というのは、ロシアは今年から夏時間のまま冬を過ごすことが決定され、しかもこれは当分続けると宣言されているからです。 夏時間、冬時間へのそれぞれの切り替えには、莫大な経費が発生するため、経費節減のためとの理由のようですが、多くのロシア人は、おそらく長年習慣となっている冬時間へ切り替えが突然無くなったことで、身体に変調をきたしつつあるように思えてなりません。起床の時間になっても、外はまだ真っ暗闇で、筆者も生活の調子が狂ってしまい慢性的寝不足状態となってしまいました。 ロシアが冬時間とならないことで、冬時間に移行した欧州主要国との時差も3時間に広がり、仕事のやり取りも含め、戸惑うことが多くなっています。ましてやロシアの東の地方は、登下校時間等生活パターンのリズムが更に狂うとして、今年の早い段階から抗議活動が続いたことは大きなニュースとなっていました。大統領も暗いうちから起き出すパターンにそろそろ後悔しているのではないでしょうか。 ロシアはようやくWTO加盟が来年夏となることが確定し、投資を呼び込む環境が準備されていくものと思われます。 他方で、最近はボリショイ劇場の大改修も終わったばかりですが(写真)、目の玉が飛び出るような高額な入場料(5万円―6万円相当)でも満員となる状況は、バブルの再来の感を呈しつつあるように思えます。今こそ地道な物づくり産業発展のチャンスであると思うのですが、果たしてロシアはこのままバブルの再来に突入し、それどころではなくなるのでしょうか?
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
先月のレポートでは、今年のロシアの秋が寒いことをお伝えしましたが、その後昼間の気温が10数度となる、所謂“バービエレータ(おばさんの夏)”という“小春日和”が10日間ほど続きました。“夏”というには涼しい気候で、日本で10月中旬になっても昼間が30度の夏日になる例年にない暑い秋とはかなり異なりますが。 しかしこの“暖かい”時期もあっという間に終わり、翌週は朝が0度近く、昼間でも5−6度という気候に突入しています。既に初雪もあり、ゴルフ場がクローズとなるのは例年よりも早くなるようです。 既にご承知の通り、先般、次期大統領候補が早々と発表されてしまいました。 このニュースが流れてからまだ1ヶ月ほどしか経過していませんが(10月16日現在)、産業界では既に新しい動きが始まりつつあるように見受けられます。 現大統領の登場の後は、掛け声では“産業の近代化”なるものがうたい文句のように叫ばれていましたが、高止まりしている原油をベースに石油、ガスの輸出で得られる莫大な代金は、殆どが欧州等西側諸国からの自動車をはじめとする完成品の輸入代金に充当され、国内の生産設備には殆ど振り分けられない、言わば入ってきたお金がそのまま出てしまうという、非常に単純で分かりやすい経済構造を続けている状態にありました。原油価格が少しでも下がると、すぐに大きなニュースとなることは、以前にもお知らせした通りです。 老朽化した設備機械を大量に抱える工場は、欧州等の生産設備より生み出される工業製品とは品質的にも到底、太刀打ち出来ず、たとえばプラスチックの金型などは、ポルトガル、スペインのメーカーより購入することが常識となっており、自国の金型産業が育つ環境は殆どありません。 このように右から左にお金が出て行くことに対して警鐘を鳴らし、緊縮財政を主張していた財務大臣は、現大統領から煙たがられ、一旦は辞任を表明したことは、ニュースでもかなり大きく報道されていましたのでご存知の方も多いのではないでしょうか。ところが先般、次期大統領“候補”の一声で次期政権に残ることになったとのことです。 最近は、長年具体化が延期されていた、設備購入の話も急ピッチで具体化したいとの話も相次ぎ、弊社も急に忙しくなってきた次第です。自動車の分野でも、外国のメーカーが自動車工場を建設し現地生産する場合は、6年以内に現地の部品調達率を30%−45%に引き上げることが法律で要求されています。部品の現地調達を進めるには、ある水準以上の品質であることが必須で、そのためにも新規設備・技術導入が必要であることは明らかです。 近い将来ロシアが再び“工業生産国”のイメージを取り戻すことを、切に願わざるを得ません。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
今年のモスクワの夏は昨年に較べやや過ごしやすい気候でしたが、9月に入ると雨模様の気候が続き、一雨ごとに涼しさも増し、朝晩は10度を少し越える寒い気候となっています。モスクワでは都市暖房が始まるのが10月のため、風邪を引く人が目立つようになりました。この寒さで筆者も風邪を引いてしまいました。 新学年のシーズンも始まり車の渋滞はいよいよひどくなっていますが、最近は日本を始めとした各社の乗用車組image3v画が次々と発表されています。一体どこにそれ程の需要があるのか、理解に苦しみます。また一般的に購買力が伸びているのかどうかもはなはだ疑問です。 最近のラジオ番組では給料の遅配の問題が取り上げられていました。日本ではほとんど考えられない問題ですが、以前の経済危機の影響を今も引きずりなんと企業の3割近くに、なんらかの給与の遅配があるそうです。また欧州経済の問題はロシア経済にも影響が広がりつつあり、ルーブル安の為替の問題が益々進み、これらの問題は日に日に暗雲を漂わせてきたようです。 このような中、8月に恒例の自動車関係の見本市がありました。 今年は自動車部品が主体のAUTOMECHANICA(8月24日―27日)と、自動車も展示されるINTERAUTO2011(8月24日―28日)が同時に開催されました。部品メ ーカーでは中国が圧倒的な数の会社で参加していたのが、目立ちます。韓国の会社もそれに続いて多くの会社が参加していました。自動車が展示されたのは、ロシア最大の自動車会社AVTOVAZの小間ぐらいで、今年の見本市ではその他の自動車会社の小間は殆ど見当たりませんでした。AVTOVAZの大きな小間では大手出資会社のルノーとの共同開発のユニバーサルタイプの乗用車LADA Largusを前面に出して展示していたのが目を引きます。(添付の写真をご覧ください。) ロシアの自動車関係市場は、今後各社入り乱れての混戦が予想されますが、部品産業が成長していないため、予定される数の乗用車の生産が果たして実現するのか、課題は大きいと思われます。 自動車会社がいくつかある、サンクトペテルブルグでは既に何度か御報告しています通り、治安の悪さも大きな問題です。 筆者は最近もサンクトペテルブルグに出張しましたが、パスポート等を盗まれては困るので、パスポートを持参しないで出張する方法を考え、実行しました。別の書類を準備して出張したのですが、空港のチェックイン、安全検査等も無事通過できました。囲み強盗の取締りが一向に行われないサンクトペテルブルグでは、不要な書類、財布の持参を極力減らし、いざとなれば断固たる態度で臨むことが肝要ですが、具体的にどのようにそれを実行するか、これはまた別の機会でご披露しましょう。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
モスクワの夏も後半に差し掛かり、昨年に較べやや過ごしやすい気候が続いたモスクワも残暑ともいえる陽気となっています。夏休みシーズン真っ只中のロシアでもあり、街は閑散とした状態で、車の数も少なく渋滞も殆ど見当たりません。 しかしアメリカに端を発した株式市場の乱高下の影響は、ここロシアでも為替に大きく影響が及び、ルーブルの対ドル、ユーロ相場は半年振りの安値となり、その後もなかなか安定しません。対ドルレートで29.50、対ユーロで41.95はかなりのルーブル安で2008年後半の為替の混乱が思い出され、引き続き警戒が必要です。 このような状況ですが、ロシアでは原油価格が下がることを心配することに力点が置かれているようで、少し原油価格は持ち直したものの、また、じり安になるのではという不安を常に持っているようです。これはこの国が大いに石油に依存していることの現れでもあり、ロシアの石油、ガス部門はGDPの約2割、輸出に至ってはその約半分を占めているということからもそれが伺えます。 最近発表された、第2四半期(4月〜6月)のGDPの伸び率は予想された4%前後を大きく下回り3.4%に止まったことはかなりの衝撃的ニュースですが、構造改革が一向に進まず、原油頼みが当分続いていくことがいよいよ明らかになった形ともいえます。政府が何とかしようとしている、物づくりへの転換をめざす構造改革が進まなければGDPのジリ貧は当分続くわけですが、これは政府の掛け声だけではもはやどうにもならないとも感じられます。 最近ロシアの人たちと話しをするなかで、所謂中間層や、企業の幹部の意識の中には現状に大いに満足しているとの意見が多いこと、また物づくりでも、例えば家電産業はロシアでは大いに盛んであるとの意見も出され面食らいます。家電産業といっても現実的には外国メーカーのブランドの委託生産が殆どで、所謂白物家電の殆どは単なる組み立てであるのが現状です。冷蔵庫などはイタリアやトルコのメーカーが自社ブランド製品をロシアの地方の工場に委託し大量に組み立てが行われています。 いずれにしても原油輸出で稼いだお金は、外国メーカーブランド商品の購入に使われるわけで、国産製品の市場に占める割合は極めて少ないのが現状です。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
今年のモスクワの夏は欧州の冷夏に較べると、過ごしやすい気候が続いており、時折の夕立のお陰で郊外の泥炭の発火も抑えられるのではと期待されています。このような天気とは裏腹にロシア及び隣国はかなり荒れ模様です。 前回もお伝え致しましたが、隣国ベラルーシの通貨切り下げは国内消費者物価を44%も引き上げることとなり、このため、ミンスク等の主要都市部では大規模なデモが発生、私服姿の警察官が若者を連行していく様子が、ニュースで連日報道されていることは痛ましい限りです。ロシアが供給する電力の支払いも滞っていることから、とうとう送電がストップされました。 欧州に於けるギリシャ、ポルトガルのように、ベラルーシの今後の成り行きはロシアにとっても大きな影響をもたらすものと考えられます。今後小国であるベラルーシ経済がどのような形で自立の道を歩めるのか、大いに注目されるところです。 一方ロシアでは、去る6月30日に終了した、第14回チャイコフスキーコンクールでの指揮者ゴレンシュタイン氏の差別発言を巡って激震が走っています。 チェロの決勝に残った5人が決まった段階で同氏はオーケストラのメンバーに対し、決勝に残った一人について、“山岳遊牧民のことは意に介す必要はない、西本(智実氏。日本人女性指揮者)の従兄弟である。彼はここに存在する必要はない。指揮者だけを意識して弾くべし。彼よりも小さい音量で弾くべし”と指示。この様子が、u-tubeを通じて世界中に発信されてしまったのです。有望な若手チェリスト及び5月の日本演奏旅行に同行した日本人指揮者に対してのこのような差別発言はさすがに審査委員会委員長であるゲルギエフ氏も擁護できず、同指揮者がオーケストラより追放となったことは大きなニュースとなっています。皮肉なことにアルメニア出身のこのチェリストAkhnazaryan氏は優勝者となりました。 先日筆者はサンクトペテルブルクで行われた入賞者が演奏するガラコンサートに招待されましたが、演奏中の携帯電話、写真撮影等、聴衆のモラルの低さには正直驚かされました。チャイコフスキーが生きていたら、さぞがっかりすることでしょう。 また後日、同じサンクトペテルブルクの地下鉄の車内で、筆者は囲み強盗の被害に遭ってしまうというおまけまでつきました。日本からの出張者と同乗した地下鉄の車内で前後に強盗に挟まれ、車検証、免許証等が入った袋を掏られてしまったのですが、旅券がホテルに保管されていたのは、不幸中の幸いでした。 サンクトペテルブルクの長年に亘る強盗集団野放し状況等モラルの欠如がロシアの中では例外的なものであればいいのですが。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
昨年モスクワは記録的な猛暑に見舞われましたが、今年は日差しの強い日はあるものの、雨も時々降るやや涼しい日々が続いています。 当地では4年に一度開催されるチャイコフスキー国際コンクール(第14回)が始まりました。世界三大コンクールの一つといわれる権威のあるコンクールですが、今回は審査委員長にサンクトペテルブルグを拠点に活躍する、指揮者ワレーリー・ゲルギエフ氏が起用され、6月30日の表彰式までの約2週間、ピアノ、バイオリン、チェロ、声楽の4部門で熱い闘いが繰り広げられます。(6月16日時点) 今年は会場がモスクワ(ピアノ、チェロ)とサンクトペテルブルグ(バイオリン、声楽)の2都市に分散される等、開催前から色々と話題を呼んでいます。ピアノ部門の審査員では先般“日本の被災者追悼コンサート”でご紹介しました、オプチニコフ氏も名前を連ねておられます。今年のコンクールはより公平さを求めていく方針であると言われていますが、果たしてどのような展開となるでしょうか? このような華やかな行事が行われている最近のロシアですが、隣国のベラルーシ(白ロシア)の経済情勢は極めて深刻で、貿易赤字増大と外貨急減を背景とした先般の通貨切り下げを機に、一気に注目を集めています。 ベラルーシの産業、経済がロシアに依存する度合いもかなり大きなものがありますが、石油、ガスの主要エネルギー源は特に大きくロシアに依存しています。また最近では電力も一部ロシアから供給を受けており、ロシアが先般受注した原子力発電所が稼動するまで、この状態は続くものと見られています。 最近のニュースでは、ロシアから供給を受けている電気代の支払いが滞ってきたとのことです。代金の不払いが続けば、ロシアとしては電気の供給をストップせざるを得なくなるでしょうが、現段階でのベラルーシ全体に占めるロシアからの電気供給量は10%前後と、たとえストップされても影響は小さいとも言われています。 ベラルーシには、大型トラック、バスの製造工場、製鉄所、食品工場等、輸出にも貢献する優良工場も少なくありません。最近弊社が機械を納入、据付けを行った食品メーカーの現場の話では、近々ロシア政府の大物が視察に訪れる予定であるとのことです。 この訪問が本当に実現するかどうかは分かりませんが、ロシアとして、ベラルーシ経済がこのまま悪化することを看過するわけにも行かず、具体的な経済支援に踏み出すのではないかと言われています。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
最近発表されたニュースによれば、ロシア最大の自動車会社“アフトワズ”の2010年の決算は36億ルーブル(約104億円)の黒字となったとのことです。 既にアフトワズについては、何度かレポートでも取り上げておりますが、巨大な自動車会社である故、数々の改善の余地が指摘されており、ルノー日産グループの25%の資本参加の後、リストラや生産技術改善等の方向が打ち出されているものの、目立った改善は見られませんでした。 しかし政府の財政支援、買い替え促進特例援助策等は、着実に成果を上げたようです。財政支援では、Rostechnologyという政府主導の親会社を設立、750億ルーブル(約2140億円)の無利子融資枠を設定、2010年にはこの枠より、430億ルーブル(約1230億円)を引き出し、結果として96億ルーブルの営業黒字を捻出、純損失62億ルーブルで上記の結果となったとのことです。 また以前にもご紹介いたしました買い替え促進特例制度は、10年以上使用の車を廃車として国産新車を購入した場合に最大5万ルーブル(約14万円)の補助金が出るというものですが、この特例で買い替え増となった分は売り上げ増の80%にもなり、結果的に前年比48%の売り上げ増、年間生産台数56万台の達成となったとのことです。 経済危機以前の月4万台以上に戻ったことで、今後の増産が見込める状況にもなったと報じられています。 これらに至る背景には、輸入外国車や、輸入中古車に対する高い輸入関税等の政府の強力な後押しもあります。ロシアでは、大都市での恒常的な車の渋滞、製造現場での旧態依然とした製造方法、余剰人員の問題等々まだまだ多くの課題はあるものの、国産自動車メーカーが活気を取り戻すことは、ロシアの抱える最大の問題である製造業の活性化に繋がるものと思われます。 筆者のロシアの会社における最近の傾向としても、今年に入って日本の生産設備に対する関心の高まりは予想以上のテンポで伸びております。もっとも、まだその多くは自動車製造関連のものではありませんが、ロシア製造業の更なる活性化は大いに期待されるところです。
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂 東日本大震災及びその後の福島原発事故から早くも1ヶ月が経過しました。震災の後、モスクワの日本大使館には、多くの市民が花束を持って弔問に訪れるなど、日本の震災で犠牲となられた方々への配慮や、外務大臣、大統領夫人の弔問等もあり、直前までの北方領土問題でギクシャクした雰囲気が取り敢えず平常に戻った感じですが、最近はロシアの市民が放射能に対して、相当強い拒否意識が根底にあるのではないかと思える事柄が目立ってきております。 ロシアは震災後、非常事態省が日本滞在者帰国の為の特別便を派遣したり、上空から放射能を測定する軍用機を飛来させる等、他国と較べてかなり神経質な動きが見られます。24年前のチェルノブイリ原発事故がまだ完全には収束していないと見る向きや、モスクワを始め各地に点在する原子力研究機関の存在で、身近に放射能が漂っているのではないかという意識があるようです。 このように神経質なロシアの報道では“何故日本の国民は大災害に対して冷静でいられるのか?”という興味ある見出しの記事が散見されます。その理由として挙げられているのは、1)日本は国民が大きな船に一緒に乗っているという意識がある。2)連帯意識が高く、節電の必要のない大阪でも広告の照明を控えたり、街頭で短時間で義援金が集まる。店舗等の機能も失われず秩序ある市民生活が続いている。3)会社も出社困難な社員には自宅で可能な仕事をさせる等の配慮をしている。等です。 筆者の知人のプロが所属するロシア国立交響楽団は5月後半、日本の各地で演奏する予定ですが、訪日を巡って内部で大論争があり、日本に行くぐらいなら退団するとして、実際に数名が辞めてしまったとのことです。 また4月中旬に筆者が日本から戻った際、モスクワ空港のタラップで係官数人から放射能測定機を当てられ、一人一人検査されました。(無論、異常値が出る人はいませんでしたが。) このように放射能に対して過敏ともいえる当地ですが、最近は輸入食料品に対しては、関東近辺の産物に対する制限はあるものの、それ以外の地域からのものは一応許可されるといった冷静な対応も出てきたようです。 震災後1ヶ月が過ぎた4月16日、モスクワの中央音楽院にて“日本の被災者追悼コンサート”が開かれました。日本からは“くらしき作陽大学”渡邉教授が訪ロされ、ロシア国民芸術家であるオプチニコフ教授とピアノの連弾演奏が行われました(写真)。満員の聴衆からは盛大な 拍手が送られました。 上記のロシア国立交響楽団による日本各地での演奏が実現し、本来の文化交流が再開されることを切に念じております。
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