2011年05月12日
2011年4月号

     モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
311日午後の東北関東大震災では多くの方が被害に遭われ、心よりお見舞いを申し上げます。今回地震では、筆者も群馬県高崎で、ロシアから来られたお客さんと一緒に遭遇しました。工場見学の途中で大きな揺れが始まり、それがかなりの時間続いたこともあり、現場にいた我々及び作業員は全員屋外に退避しましたが、しばらくして停電となってしまいました。
 ロシアのからのお客さんは生まれて初めて経験する‘地震’であったことから、相当の恐怖があったとは思いますが、気丈にもその後も暗闇の中、非常用のランプで照らしながら、商談は数時間に及びました。この間何回も揺れが続きましたが、携帯電話のワンセグTVで状況を把握しつつ、腹を据えての開き直り商談は所定の目的を達しました。
 この日は高崎から東京に戻る鉄道はすべてストップしたため、高崎のホテルの確保に注力し、何とかこの日高崎に宿泊することが出来たのは不幸中の幸いでした。
 ホテルに辿りついた後、食事をしていると、モスクワの奥さんから、彼の携帯電話に何度も電話が入り‘日本のある地域は海面下に沈んでいるとの報道があり、一刻も早く帰国するように’との‘命令’です。これでロシアでの報道がいかに大きくなされているかが分かりましたが、すぐに帰国できるフライトがその日にあるわけではないと、何度も説明をしていました。
 その後、福島原子力発電所の非常事態の報道も始まり、ロシアでは現在でも日本が相当放射能で汚染されているとの風評が広まっています。
 その後ロシアのお客さんがモスクワに戻り、筆者も数日後ヘルシンキ経由でモスクワに戻りましたが、機内は急遽母国に戻る、欧州の家族連れで満席の状況でした。
 ロシアでは、連日原発の事故を中心に大きく報道されていますが、日本の工業生産も殆どストップしており、日本と取引をすることは当分無理であろうとの認識が広まりつつあります。
 魚介類を中心とする日本からの食品の輸入も既に制限が始まり、原発事故で汚染されていないかどうかの検査が義務付けられつつあり、食糧取引はほとんどストップしています。
 このように今回の震災の海外に与えた影響も計り知れないものがあり、冷静に取引が出来る状況がくるのは、かなり先のこととなるようです。

 
2011年05月12日
2011年3月号

    モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
長い正月休みがようやく終りつつある124日の夕方、モスクワ中を震撼させるニュースが、まだ残る正月気分を一気に吹き飛ばしました。
 モスクワのメインの国際空港として欧州の殆どのエアーラインが発着する新しい建屋のドモジェードボ空港の到着ロビーで、午後425分頃、小型爆弾が爆発し35名が犠牲になったとの衝撃的なラジオニュースが繰り返し放送されました。
 モスクワには主な国際空港が2か所あり、古くから知られるシェレメーチェボ空港と数年前に新しく建て替えられたモダンなドモジェードボ空港があります。シェレメーチェボ空港はモスクワの北西に位置し、ロシアを代表するアエロフロートは勿論、日本航空、ルフトハンザ等の欧米の航空会社の殆どが利用していましたが、モスクワからサンクトぺテルブルグへの幹線道路沿いにあって、交通の渋滞は日常的にひどく、夕方の出発に乗り遅れることもしばしば見られました。
 南のドモジェードボ空港が新装となったのを機にルフトハンザ、スイス航空等の欧州便がここに早々と移転、しばらくして日本航空もこちらに拠点を移し、週3便のフライトが定着したという次第です。数年前よりは市内から快速電車の運行も始まり、約40分で到着するという利便性も人気を博しています。
 このように多くのフライトが発着するドモジェードボ空港ですが、数年前に自爆テロで南に向かう出発便が同時に2機空中で爆発した事はまだ記憶に新しいところです。
 この後一時、空港に入る際の手荷物検査も厳しくなったのですが、喉元過ぎればの例え通り、最近では殆どノーチェックの状態となっていました。特に到着ロビーはチェック体制など全く無く、到着客を目当てにした多くのタクシー運転手も自由に客待ちを行っており、爆発の犠牲者の大半はこれらのタクシーの運転手であったとのこと。以前筆者がお世話になった女性運転手も被害に遭い、今でも意識不明と聞いています。
 日本航空もここ数年、この空港を拠点として日本人の行き来も頻繁ですが、この日は成田より到着した日本航空441便は予定より早めの午後3時過ぎに到着しました。旅慣れたビジネスマンの殆どは4時前後には空港を後にしたようです。
 またこの日は団体旅行客も到着しました。彼らは荷物の受け取りに手間がかかったのに加え、数名の方がトイレに行かれ、全員が揃い出口に向かおうとした矢先に、出口を左に行った先にあるカフェで爆発が起こったとのことです。
 今回日本人の中に犠牲者が全くなかったことはまさに奇跡としか言いようがないと関係者の皆さん大変驚いています。
 筆者も度々この空港を利用していますので、とても他人事とは思えません。最近のモスクワでは市内の地下鉄で自爆テロが起こるなど、危険を避けるすべはもはやどこにもありませんが、平穏なモスクワに戻ることを願わずにはおれません。

 
2011年05月12日
2011年2月号

    モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
昨年2月号のレポートでもお伝えしましたように、ここ数年ロシアでは110日までが休日となっており、今年も長い長い正月となっています。
 旧暦(ユリウス暦)では17日がクリスマス、113日が新年であること、欧州のように1225日前後もクリスマス休日ではなく、年末まで通常の勤務が続くこと等より、新年の休暇を長期に設定したと思われますが、実際には本年も116日まで殆どの企業の幹部が休暇を海外で過ごしており、この状況が収まる1月末まで、まともに仕事の話ができる雰囲気ではありません。一般の市民の多くは正月に海外で休暇を取れるわけではなく、この時期(少なくとも10日まで)、銀行や、役所も全く機能していないため、大変な迷惑であると嘆いています。
 最近このような状況を含め、つくづく感じるのは、当地の人達は本質的に、勤勉に仕事をすることに関心がないということです。欧州等でスキー休暇を取るために休日を10日間も制定するような国が果たして、まともな経済発展をする可能性があるのでしょうか。
 昨年の中頃、政府は外貨誘致を促進するためとして、様々な施策を発表しました。“長期直接投資のキャピタルゲイン課税廃止”、“法人税軽減の検討”、“革新的技術を持つ企業に対する減税”、“専門家の入国手続き簡素化”、“シリコンバレーの創設”等々です。
 このような施策が打ち出されつつあるにも関わらず、昨年後半あたりから、資本の流出が加速し、今年はこれが更に増大するだろうとのニュースも耳にするようになりました。消費の増大を見越して、拠点を設けようとしていた、米ウォルマートもモスクワ事務所の閉鎖を発表するなど、目立った動きも出てきています。
 人件費や不動産賃料が欧州と殆ど変らないこと、司法上の欠陥、煩雑な許認可手続き等がそれらの理由として挙げられていますが、一番大きな理由は国民が勤勉でないということにあるのだと思われてなりません。
 原油価格が1バレル90ドル前後の高値で推移している資源輸出があることに胡坐をかいている訳ですが、輸入量も減少することなく、外貨流失に歯止めが掛からないようです。自国の生産を真面目にやろうという動きが中々軌道に乗らないのも仕方がないのかも知れません。昨年夏の記録的な猛暑で停滞した経済が1月の大型連休の後、果たして取り戻せるのかどうか、いよいよロシアも今年は正念場を迎えつつあるような気がします。

 
2011年05月12日
2011年1月号
     モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
ここ数年、日本からロシアへの進出企業も徐々に増えており、ここ1年の間にも数社が進出され、その企業数は15社となったとのことです。
 ロシアで事業を行うには、納税問題を中心とする税務当局とのやり取りを始め、ロシア関係当局との折衝が欠かせませんが、これらのいろいろな問題を共有し、纏まって関係当局にも働きかけていこうと、最近、ジャパンクラブの中にこれら15の企業で作る連絡会が設けられ、スタートしました。
 今後は更に多くの日本企業のロシア進出が予想されますが、12月、日本大使館領事部より発表されたデータ(201010月現在)を見ると、在留邦人の数は2009年に較べてもそれほど増えていないように感じられます。
 興味あるデータでもありますので、以下ご紹介いたします。(かっこ内は2009年)

1 ロシア全土       2,203名(2,137名)
2 大使館領事管轄地域(注)1,705名(1,611名)
 (職業別内訳)
 民間企業          969名(  885名)
 報道             50名(   53名)
 自由業            46名(   47名) 
 留学生等          285名(  284名)
 
 政府機関          241名(  243名)
 
 その他            64名(   55名)
 永住             50名(   44名)
3 都市別にみると以下の通りです。
 モスクワ市周辺      1,550名(1,494名)
 サンクトペテルブルク    233名(  231名)
 ウラジオストク       104名(  117名)
 ハバロフスク         94名(   94名)
 ユジノサハリンスク      67名(   84名)

 欧州及び韓国からの在留人数は桁違いに多いのですが、地方の生活も大変なものがあり、進出地域の選択には十分な検討が必要なようです。皆さんが安全に在留生活を過ごされることを願わずにはおられません。

(注)
クラスノヤルスク地方及びティヴァ共和国以西(サンクトペテルブルク市及びレニングラード州を除く)及びチュコート自治管区

 
2011年05月12日
2010年12月号
       
     モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
ロシアは現在でも国土が世界一という広い地域を占めていますが、それでもソ連であった頃から面積は大幅に減少しています。ロシアは最近、かつて同盟関係にあった主要隣国との経済的結びつきを強めており、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンとの関税同盟はその代表例といえます。
 ロシアビジネスといっても、ロシア国内のみに目を向けるのではなく、つい最近まで同じ政治・経済圏であった隣国事情も念頭に置いて取り組むことが、ビジネスの展開上も重要であると思います。
 ロシアの周辺諸国にとって、ロシアはモスクワ等大都会の巨大マーケットを有する重要な市場です。ロシアマーケットを見据えた商品の製造に力点が置かれていることは当然の成り行きでしょう。物づくりがなかなか進まないロシアを尻目にこれら周辺国の製造業は努力を続け、今では相当力を付け貿易量を増やしつつあるように思えます。
 また、化石燃料価格の高騰が続く現在、ロシアは基幹産業である石油、ガスの分野でカザフスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン等の産油国との連携を更に強めています。
 これらの国々に共通するポイントとしては、カスピ海、イスラム教があります。
 アゼルバイジャンの首都バクーでは、1118日、カスピ海周辺5カ国会議が開かれ、ロシアのメドベージェフ大統領を始め、イラン、カザフスタン、トルクメニスタンの元首が参加し、ガス、石油の輸送問題を始めとしたこの地域固有の課題に関する話し合いが持たれています。
 また、トルクメニスタンでは、1117日から19日まで、イスラム最大の祝日である“ハッジ”に相当するKURBAN BAIRANという祝日があり、この期間大規模な石油ガス見本市(写真)が行われ、筆者はこれに参加する機会がありました。
 小国のトルクメニスタンは石油、ガス及び関連産業がメインですが、トルコからの輸入に頼りきりの消費物資等も自国生産に向け準備が始まりつつあるようです。
 このようにロシアというマーケットを見る場合、その周辺の国々が果たしている役割や人々の日々の営み、文化、宗教のきめ細かい中身を理解することはビジネス展開にとっての基本であるといえます。世界的に情報の普及スピードは想像をはるかに超えていますが、これらの情報手段を通じた人々のニーズも目覚しく変化しているということです。
 これら周辺国の産業の変化に敏感になることは、ロシアでのビジネス展開に於いても極めて重要であると痛感する次第です。

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2011年05月12日
2010年11月号

            モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
今年のモスクワは猛暑でしたが、秋口になると寒くなるテンポが速くなり10月中旬には早くも初雪の到来となりました。暑い夏が続いた後の冬は寒くなるという今までの経験から、今年のモスクワの冬はマイナス40度になるといわれており、寒くなるテンポも一段と速いような気がします。
 多少景気も戻りつつあるロシアなので、日本からの出張者も増えつつあるようですが、今回はロシアに出張される際に注意すべきポイントを述べてみたいと思います。
 まずロシアでは、滞在VISAの取得は勿論ですが、入国の際に記入するイミグレーションカード及びホテル等滞在先経由で発行される滞在証明書を所持することが義務付けられており、町を歩く際もパスポートに加えこれらを所持していないと面倒なこととなります。これらの不携帯を理由に町で警官に現金を要求されることがあります。この場合、現金を渡すことなく、日本大使館発行の対警官要請状(大使館ホームページからダウンロード)を提示するとよいでしょう。
 もう一つは、サンクトペテルブルクでは特に引ったくりに注意をするべきです。人通りの多い目抜き通りや地下鉄車内で、数人が外国人を取り囲み、動けない状態にしたうえでポケットから財布を抜き取るというものです。
 先日東京のアマチュアオーケストラがロシアを訪問、サンクトペテルブルクとモスクワで公演を行いました。筆者もこれに参加する機会があり、公演は好評を博しました。しかしサンクトペテルブルクでは、数人がこのスリの被害に遭われてしまいました。

筆者も一度サンクトペテルブルクで危うくこの被害に遭いそうになったことがありましたが、前を歩いていた同僚に大声で助けを求めたため、スリの集団がひるみ、この隙に相手を突き飛ばして難を逃れたという次第です。
 外国の企業を招致するとしているサンクトペテルブルクですが、これらの連中の取り締まりが殆どなされず、野放し状態なのは理解できません。最近ようやくマスコミで問題が取り上げられ始めたようですが、まじめに取り締まりが行われるのかどうか、甚だ疑問です。
 注意をしていても、突然囲まれると驚いてしまうこととなりますが、被害に遭われた場合、一番大事なことは、日本語ででも大声を上げることです。黙っていると周りには分かりませんからこの点だけはくれぐれもお忘れなく。


 
2010年10月06日
     モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 既に報道されていますように、モスクワでは7月中旬から8月中旬まで連日、日中35℃以上の高温の日々が続き、しかも雨がまったく降らないこともあって、郊外の泥炭層が発火、7月後半からはモスクワ市内で野焼きの煙が空を覆っています。過去にも何年に一度か暑い夏はありましたが、1ヶ月もこのような状態が続くことは初めてで、冷房が殆ど無い日常生活も厳しいものがありますが、回復を期待される経済にも影響が出ることが懸念されています。
 暑い夏のさなか、今回は広島を代表されるマツダさんのモスクワ駐在の方にインタビューをさせていただきました。モスクワ生活等に関しご披露いただきましたので、ご紹介いたします。
 ロシアマツダさんには従来日本人の方は駐在されていなかったのですが、昨年後半に河野さん、高津さんがドイツより赴任して来られました。

 
(河野智弘さん)―広島県御出身で経理、財務関係全般のお仕事をされておられます。
(高津宏一郎さん)―横浜御出身でアフターセールス全般を統括されています。

――モスクワ生活の印象は?
(お二人)モスクワに赴任する前に抱いていたイメージとは異なり、不便なことも色々あるが、比較的暮らし易く、モスクワ生活をエンジョイしている。ソフトボールチームにも所属し、気分転換を図っている。
(河野さん)文化的催しも多く、休日にはバレエ観賞に劇場に行くこともある。
(高津さん)自転車に乗ることが趣味なので、今後機会を見つけトライしたい。自宅では料理をすることがあり、この間はボルシチを作ってみた。

――不便なことや困った経験は?
(高津さん)アパートの家主との間で、修理等をめぐってトラブルが続いた。冬に部屋の温度が4℃ぐらいとなり、とても寒い思いをした。
(河野さん)タクシーを気軽に利用することが出来ないので、地下鉄を利用することもあるが、言葉の問題から、ある通行人に無視したと誤解され、いきなり殴られた。

――広島の皆さんに伝えたいことは?
(お二人)ロシア人は日本人に対して、自動車の生産を含め工業レベルの高さ、文化、伝統を含め、尊敬の念を強く抱いており、とても親日的である。もっとロシアに目を向けてみてはどうか?

――今回はお忙しいなか、どうも有り難うございました。
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写真の右側が河野さん、左側が高津さん

 
2010年08月31日
    モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 ロシアの国産自動車の売上げが最近伸びているといわれています。
 
先般筆者はこの中でもロシア最大手のアフトワズ社の幹部と話をする機会があり、同社が現在取り組んでいる改善方向等聴取しましたが、ロシアの自動車産業が抱える問題点を含めお伝えしたいと思います。
 同社の昨年、一昨年の業績は数百億円の赤字、本年度は100億円ほどの黒字との予想です。大きな理由は、政府が10年以上の中古車を処分し、新型ロシア産自動車を購入したユーザーには1台あたり10万円程の補助を出すというもので、この結果乗用車の購入代金は50万円前後となり、海外からの輸入車に較べると相当の安値となったことが功を奏したというものです。中古車の処理施設の建設が追いつかない等、色々課題はありますが、大幅な赤字で瀕死の状態であった自動車産業が少し息を吹き返しつつあるようです。
 日本やドイツでも同じような補助制度があり、功を奏したことが参考になったのは言うまでもありません。
 ロシアではとりわけ自動車産業の不振が大きく、政府にとって頭痛の種であるのですが、その理由の主なポイントを挙げてみたいと思います。
 最大の問題は古い生産設備と余剰の労働者です。アフトワズ社は40数年前、イタリアのフィアット社から導入したモデルをもとに永年同じ車を作り続け、設備もそのまま使ってきましたが、結果、生産効率が悪く、また常に多くの作業者を確保してきたという歴史があります。
 また自社内には大きな生産設備の製造工場を保有し、3万人もの労働者が古い図面で、ロボットなど工場で使う設備を作り続けています。
 以前は何でも自分で作ることが大いに賞賛されたソ連邦のやり方ですが、当時は新しい図面でも、時代が経過すると必ず古くなるのが現実です。結果、毎年新しい生産設備が発表される国際マーケットから適宜、設備を購入するという方法ではなく、古い図面で生産設備を作り続け、大量のワーカーと共に、生産効率、品質向上も遅れ遅れとなって今日に至っています。
 最近自社内設備工場のワーカーは3万人から6000人に削減されたとのことですが、それでも古い図面で設備を作るやり方は続いています。日産、ルノーと提携しての増産計画も発表されてはいますが、根本的なこれらの方針が変更され、スリムでフットワークの良い生産方式への切り替えが果たして実現するのかどうか、その道はまだまだ長いように思えてなりません。

 
2010年08月04日
   モスクワ ビジネスサポーター  岩本 茂

 
ロシアが欧州の地域に深く関わっていることは、昨今のギリシャの金融危機の影響がまともに及んでいることで実感される、最近の情勢ですが、日本に対する期待も我々が考えている以上に大きなものがあります。
 去る6月9日、日露運輸協力に関する政府間作業グループの第3回会合が,モスクワにて開催され、筆者もこれに参加いたしました。
 本会合は2007年3月に設立された同作業グループの、2009年10月開催の第2回会合に続くものでした。
 今回はロシア鉄道社から,日本の民間企業向けに“日本企業との協力が期待される物流・鉄道インフラ近代化案件等について”という説明がありました。
 同社幹部より、ロシア鉄道が総延長86,000km、従業員150万人を擁する電化鉄道に於ける世界一の鉄道会社であるとの説明がありました。
 一昨年の経済危機で落ち込んだ鉄道輸送量が今年は75%増加に転じたと紹介され、極東と欧州を結ぶ大動脈ルートとして、もっとロシア鉄道を利用してもらいたい、日本にはこの鉄道関連分野での生産の拠点をもっとロシアに導入して欲しいとの要望がありました。
 日本は鉄道分野の技術では世界一の先進国であることから、日本に対する期待は極めて高いのですが、日本からロシアまたは欧州に向かう貨物輸送でシベリア鉄道を利用すると、その運賃が高額な為、利用率は極めて低く、このことがロシアにとっては理解できないようです。運賃を下げるのが先か、輸送量を増やすのが先かという、いわば卵と鶏の論議はまだまだ続きそうです。
 ロシアに進出した日本の企業にとって、製品、部品を運ぶ手段としてのシベリア鉄道は依然として高額であり、その為南回り船便ルートを利用せざるをえない状況ですが、時間と手間がかかり、大きな足かせとなっています。
 6月2日、モスクワから北約400kmの地点にあるヤロスラブリ市に建設されたコマツロシア製造〔有〕の建設機械製造工場の竣工式があり、日本の河野大使、ヤロスラブリ州知事、連邦政府代表等多数が出席されました。
 この事業を足がかりに同地方に日系企業を誘致したいというヤロスラブリ州及びロシア連邦の意向ですが、モスクワからの幹線道路が工事中の状況であること、また建設機械の市況がまだまだ回復途中にあることにより、生産計画も当初の計画からスローダウンを余儀なくされているようです。
 石炭や石油を運ぶ運搬手段としての鉄道も重要ですが、製造に必要な部品や、各種製品、食料品等がもっとスムーズに運搬されるようになることが、日本の多様な産業のロシア進出には極めて重要であると思う次第です。
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2010年07月02日
            モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂

 
4月初めのアイスランドの火山噴火では、火山灰が東に流れたことが原因で欧州の空港が軒並み閉鎖となり、旅行者の行き来、貨物の流れに多大の影響が出たことは記憶に新しいところです。しかし既に喉もと過ぎればの感じもあり、記憶のかなたに埋もれようとしている状況でもありますので、ロシアから見た観点より少し纏めをしてみたいと思います。
 当初、アイスランドから東に流れ始めた火山灰がロシアにまで影響を及ぼすという予想はなく、数日後、週3便を運航している日本航空が一旦運航を見合わせるという事態になった時点で、日本とロシアを行き来するビジネスマンに大きなショックを与えました。
 
日本からの観光客が欧州で数日足止めを食らった頃、ロシアを訪れていた観光客もその先の欧州への移動はもちろん日本へ戻ることも出来ない状況が発生しています。
 
ロンドンからモスクワに出張で来られた邦人の方々が、戻りの航空便が無くなり、仕方なくモスクワの白ロシア駅からパリ行きの夜行列車に乗って、1昼夜半かけて欧州に戻ったという話をいくつも耳にしました。
 
このような状況がどのくらい続くのかという不安な気持ちをもった4月20日前後、日本航空は足止めを食らった観光客を迎えにローマとモスクワに空便を飛ばしたというニュースがあり、その後は定期便の運航がなんとか続けられています。
 
ご承知の通り、ロシアと日本の航空ルートはロシアの北極圏に近い、かなり北の火山灰の影響を受けやすいルートを飛ぶことが定められているため、日本やフィンランドの航空会社は火山灰によるエンジン部品の腐食やトラブルを避けて、運航を見合わせざるを得なかったのですが、この間ロシアのアエロフロート航空は日本への運航を停止することなく、飛び続けたのです。ロシアの飛行機は広大なロシアの上空で火山灰の影響が少ないルートを選び、自由に安全なルートを確保したからこそ飛び続けられたのだといわれています。
 
既に火山の爆発から1ヶ月以上が経過しましたが、日本からロシアに送る貨物やクーリエ便は通常の2倍の時間がかかっており、欧州からトラック便でモスクワに運ばれる貨物もモスクワ近郊の税関ターミナルでかなりの時間足止めを食らっています。タイムリーな輸送はビジネス展開にとって重要なポイントですが、ようやく回復を見せつつあるロシア向けのビジネスにもまだ灰色の雲が漂っているかのようです。欧州への旅行の計画を立てようにもいつ何時キャンセルせざるを得ないかもしれないという不安があり、今ひとつ盛り上がりが見られません。このように、こちらでは現在でも火山灰に対する風向き等が大きなニュースとして殆ど毎日報道されていますが、ギリシャ問題を抱え混乱する欧州経済にこれ以上のマイナス影響が出ないよう願わずにはおれません。