2011年4月号
モスクワ ビジネスサポーター 岩本 茂
3月11日午後の東北関東大震災では多くの方が被害に遭われ、心よりお見舞いを申し上げます。今回地震では、筆者も群馬県高崎で、ロシアから来られたお客さんと一緒に遭遇しました。工場見学の途中で大きな揺れが始まり、それがかなりの時間続いたこともあり、現場にいた我々及び作業員は全員屋外に退避しましたが、しばらくして停電となってしまいました。
ロシアのからのお客さんは生まれて初めて経験する‘地震’であったことから、相当の恐怖があったとは思いますが、気丈にもその後も暗闇の中、非常用のランプで照らしながら、商談は数時間に及びました。この間何回も揺れが続きましたが、携帯電話のワンセグTVで状況を把握しつつ、腹を据えての開き直り商談は所定の目的を達しました。
この日は高崎から東京に戻る鉄道はすべてストップしたため、高崎のホテルの確保に注力し、何とかこの日高崎に宿泊することが出来たのは不幸中の幸いでした。
ホテルに辿りついた後、食事をしていると、モスクワの奥さんから、彼の携帯電話に何度も電話が入り‘日本のある地域は海面下に沈んでいるとの報道があり、一刻も早く帰国するように’との‘命令’です。これでロシアでの報道がいかに大きくなされているかが分かりましたが、すぐに帰国できるフライトがその日にあるわけではないと、何度も説明をしていました。
その後、福島原子力発電所の非常事態の報道も始まり、ロシアでは現在でも日本が相当放射能で汚染されているとの風評が広まっています。
その後ロシアのお客さんがモスクワに戻り、筆者も数日後ヘルシンキ経由でモスクワに戻りましたが、機内は急遽母国に戻る、欧州の家族連れで満席の状況でした。
ロシアでは、連日原発の事故を中心に大きく報道されていますが、日本の工業生産も殆どストップしており、日本と取引をすることは当分無理であろうとの認識が広まりつつあります。
魚介類を中心とする日本からの食品の輸入も既に制限が始まり、原発事故で汚染されていないかどうかの検査が義務付けられつつあり、食糧取引はほとんどストップしています。
このように今回の震災の海外に与えた影響も計り知れないものがあり、冷静に取引が出来る状況がくるのは、かなり先のこととなるようです。